無脊椎動物の中の一動物門。萼部の触手冠内に肛門が開いていることで内肛動物Endoproctaともいう。体は萼(がく)部とそれを支える柄とからできていて,その萼部が柄に対して傾いていることから曲形動物と名付けられている。ごく少数の淡水産を除いてすべて海産。群体性のスズコケムシ類は石,貝類とか海藻の表面に走根で着生して無性的に広がる。また,単体のロクソソマ類Loxosomaはごく微小で,ホヤ,カイメン,ゴカイなどの体表面に付着する。
スズコケムシ類は萼部がわん状で,上縁に8~30本の触手が1列に並んで触手冠をつくる。触手の内側に密生している繊毛を動かして水流を起こし,細かい餌を集めて口へ運ぶ。体内には口から肛門に終わるU字状の消化管があって体内の大部分を占める。排出器は食道の近くに,そして生殖器は終腸の近くにあって,触手冠の内側に開いている。循環系と呼吸系はない。大部分のものは雌雄異体であるが,同体のものもある。柄の形には種によっていくつかの特徴があり,走根と連絡する基部に太い樽状の筋肉節をもつものではこの動物特有の屈曲運動をする。
体内で受精した卵は輸卵管を通る間に粘液の膜に包まれ,外に出されると膜の後方にある短い紐で輸卵管の開口部付近に付着する。次々に卵が付着して,1個の保育囊がつくられるが,孵化(ふか)するとしばらくの間,浮遊生活をし,後にふたたび他物に付着する。
単体のロクソソマ類は全長0.3~1.5mmで,萼部と柄との間がはっきりせず,柄の末端で直接他物に付着しているが,体を曲げて多少移動することもできる。スズコケムシBarentsia discretaは日本各地でごくふつうに見られる種類である。ジュズコケムシB.benedeniは柄に5~6個の筋肉節をもっている。アジモスズコケムシB.laxaは8~10月ごろに東北地方のアジモ(アマモ)の葉の上によく成育する。アッケシロクソソメラLoxosomella akkeshiensisは全長0.9~1.2mmでゴカイ類の体表に付着する。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物分類学上、一門を構成する動物群。袋形(たいけい)動物や扁形(へんけい)動物に近縁の動物群と考えられており、曲虫類や内肛動物(ないこうどうぶつ)ともよばれている。スズコケムシなどを含む小群で、一部の淡水産のほかはすべて海産である。群体性と単体性の種があり、群体性のものは各種の固定物の表面に着生する。単体性の種は、一部を除いてほかの動物の体表または棲管(せいかん)内壁に付着するか、あるいは自由生活をしている。体は0.2~10ミリメートルで、萼(がく)部とその下の細長い柄部よりなり、短棒状かラケット状をしている。萼部は体の本体で、上縁または上前縁に1列の触手冠があり、その中に、口、排出孔、生殖孔、肛門(こうもん)が開いている。萼部には、食道、胃、腸、終腸よりなるU字状の消化管、排出器、生殖器、神経節などがある。柄部には筋組織があり、自由生活をする種ではその下端に特殊な移動器官がある。
雌雄同体の種と雌雄異体の種があり、繁殖は出芽による無性生殖と卵による有性生殖を行う。卵は体内で受精し、トロコフォラ型幼生で産み出される。幼生は大部分の種では変態して成体になるが、一部の種では幼生生殖を行う。群体性の種は強い再生能力をもつが、単体性のものでは再生は確かめられていない。また、群体性の種は生態的性質から広い分布を示す傾向があり、単体性の種は宿主に対する強い選択性を示す傾向があるので、分布はその宿主に規制される。
[紺野一碩]
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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