改訂新版 世界大百科事典 「トロンプ」の意味・わかりやすい解説
トロンプ
Maarten Harpertszoon Tromp
生没年:1598-1653
オランダの提督。幼少の頃から軍艦に乗りこみ,やがて提督ヘインに素質を認められ,1637年にホラント州海軍の司令官となる。オランダ独立戦争中はスペイン艦隊と戦ってその名声を高めた。52年5月に勃発した第1次英蘭戦争の緒戦にブレーク提督の率いるイギリス艦隊にドーバー沖で敗れたが,同年12月の海戦で今度はブレークの艦隊を撃破しオランダに制海権を取り戻した。その後もブレークと数度にわたって海戦を繰り広げたが,53年10月のテル・ヘイデTer Heydeの海戦で戦死した。オランダではその後の英蘭戦争で活躍したロイテル提督と並んで歴史上名提督の一人とされている。英蘭戦争勃発の前夜に《戦争論》を著しているが,これは当時の海軍戦略のモデルになるほど優れたものであったといわれている。数ヵ国語を話し,能弁で文筆にも秀でていた。
執筆者:佐藤 弘幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報