中国,明・清時代の官僚の職名。提督を冠する職名は明の提督東廠,清の提督学政 (各省の科挙を司る) ,提督会同四訳館 (朝貢使の接待と通訳にあたる) などがあるが,最も広く用いられるのは明代の京営を総轄する提督総兵官,清代の緑旗兵 (→緑営 ) を総轄する各省に設けられた水師陸路提督であり,武官の高位の官職である。明代では定員もなく常置の官ではなかったが,清代では八旗に対して漢人を編成した緑旗兵を統率する各省の長官として提督が常置された。 18省のうち,山東,山西,河南,安徽,江西の各省は巡撫が兼管したが,提督は3~5営に分れた緑旗兵 (提標という) を統率し,同時に省内に分駐する総兵官,副将を指揮して1省の緑旗軍政を司った。なお,一般には,艦隊の最高指揮官または海軍の将官をいう。
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[名](スル)
1 艦隊の司令官。海軍の将官。「提督ペリーの来航」
2 中国、清朝の武官名。各省の軍営を統率した長官。また、水師の長官。
3 全体を取り締まり指揮すること。
「テクレオブリュダス王は、十二万人を―し」〈竜渓・経国美談〉
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〘名〙
① (━する) 全体を統轄して取り締まること。また、その人。〔新令字解(1868)〕
② 艦隊の司令官。海軍の将官。
※幕末御触書集成‐一〇一・安政元年(1854)五月二八日「東印度、唐国、日本海出張之合衆国水師提督 ペルリ」
③ 明治四年(一八七一)八月に置かれた海軍提督府(後の鎮守府)の長官。中・少将を補した。
※兵部省第五七‐明治四年(1871)七月「海軍提督府 要港を撰ひ府となし沿海管下湾港の兵備を分轄す 提督各一人 少将以上」
④ 中国の官名。武官の最高位をいう。明代では巡撫・総兵が兼ね、清代では一省の軍政をつかさどり、総督・巡撫とならぶ地方官。〔明史‐職官志五・京営〕
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