犬の競走を対象とする賭博。犬の疾駆する速さを競う図は,古代エジプトや古代ギリシアの壁画にみられ,16世紀末のイギリスの猟犬訓練所では競走がつねに行われていた。近代になって1876年にイギリスで,実物のウサギを追跡する方法で競走させたが成功しなかった。1907年にアメリカのO.P.スミスが人工のウサギを使う電動装置を考案,ユタ州でアメリカ最初のドッグレースが行われた。その後,各地で開催され,22年にフロリダで観衆5000人を集めた第1回マイアミ・ダービーが成功してドッグレースは定着した。イギリスでは26年にマンチェスターで最初の機械装置によるドッグレースが行われ,27年にオーストラリアでも初めて開催された。ドッグレースのもっとも盛んなイギリスでは,1960年代以後ドッグレース場への入場者は毎年1200万~1500万人という状況で,他のヨーロッパ諸国,アメリカ,中南米諸国,オーストラリアでも大衆的な人気を得ている。かけ方は競馬と同様の方法が多い。競走犬は生後14ヵ月から3年までのグレーハウンドが主で,通常,イギリス式は1レース6匹でコースは230ヤード(約210m)から1200ヤード(約1100m)までの長短各種,アメリカ式は1レース8匹で400mのコースである。日本では諸外国のようなドッグレースは行われていない。
執筆者:増川 宏一
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イヌの競走を対象とする賭(か)け事。一周400メートルの楕円(だえん)形コースの内側をダミーヘアーdummy hareとよばれる電動式の模型のウサギを走らせ、そのウサギを追ってイヌの競走を行い、競馬と同じように投票券が発売される。使用するイヌは、現在はイギリス産グレーハウンド種に限られている。グレーハウンドレースともいう。ドッグレースは、狩猟を好んだイギリス人が、互いに狩猟犬の優劣を競って競走させたことに始まるといわれるが、現行のレース形式は1926年アメリカに始まり、イギリスに伝えられた。イギリスがもっとも盛んで、イギリス本土だけで大小200余の競技場があり、開催は競技場ごとに、1年に104日以内、1日4時間8レース以内に制限されていて、夕刻から開催される。イギリスのほかアメリカ、オーストラリア、タイなどのほか、旧イギリス領の国で盛んである。日本では、第二次世界大戦直後、全国知事会議の発案で、ドッグレース法案が国会に提出されたが、GHQの意向もあって実現しなかった。
[倉茂貞助]
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