ドミニック(読み)どみにっく(その他表記)Dominique

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドミニック」の意味・わかりやすい解説

ドミニック
どみにっく
Dominique

フランスの作家フロマンタンが書いた唯一の小説。1862年雑誌『両世界評論』に発表され、翌年刊行されて以来、第二次世界大戦前のフランスでは諸種の刊本が出版され、広く読まれた。アンドレ・ジッドが「もしも無人島に暮らすことになれば、どんな本を持って行くか」というアンケートの答えに『ドミニック』を数えたのは有名である。不首尾に終わった恋愛の経緯(たった一度の接吻(せっぷん))を描いた告白体、自伝的色彩の濃いこの小説は、小さな鋭い光源から発する光に照らし出された内面劇として読めば、きわめて巧緻(こうち)な、みずみずしい小説である。

杉本秀太郎

『安藤元雄訳『ドミニック』(中公文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のドミニックの言及

【フロマンタン】より

…美術評論には,フランドル,オランダの17世紀の画家たちを論じた《昔日の巨匠たち》(1876)がある。作家としては,北アフリカ紀行もあるが,代表作は,自分が体験した年上の女性との恋愛を主題にした半自伝的な小説《ドミニックDominique》(1863)である。ドミニックは親友の従姉マドレーヌにほのかな恋情を抱き,彼女が人妻となったあとも慕いつづけ,結婚生活に幸福を見いだせなかったマドレーヌも彼を激しく愛するようになるが,結局二人は情熱を抑えて別れるという筋書きで,フランス文学伝統の心理分析小説の傑作である。…

※「ドミニック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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