改訂新版 世界大百科事典 「ドンコ」の意味・わかりやすい解説
ドンコ (鈍甲)
dark sleeper
Odontobutis obscura
スズキ目カワアナゴ科の淡水魚。日本では中部以南の各地に生息し,西日本では種々の地方名(ゴウソ,ドンクロ,ドロボウなど)をもっている。また,他の種との混同(前橋でカジカ,銚子でイソアイナメ)もある。体は円筒形に近いが頭は扁平で著しく幅広く口も大きい。全長25cmに達する。体色は生息するところによって異なり黄褐色から黒褐色で,体側の雲形斑紋が明りょうである。腹びれは左右に分かれ,吸盤を形成しない。河川の中流以下にすみ,流れの緩やかな砂泥底質の物陰に単独で身を潜めていることが多い。夜行性で釣り,刺網などにも夜かかることが多い。産卵期は4~6月で砂れき上や物のまわりにあるくぼみなどに約2mm×5mmの付着卵を産む。雄は卵を保護する習性をもつ。1~2月(水温5~10℃)には,体を砂泥に埋め眼だけを水中に出し越冬する。小型のエビ類,トビムシ類,小型魚などを食べる。美味である。
執筆者:松下 克己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報