改訂新版 世界大百科事典 「ナーティヤシャーストラ」の意味・わかりやすい解説
ナーティヤ・シャーストラ
Nāṭya-śāstra
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現存するインド最古の演劇理論書。サンスクリットで書かれ、もっとも権威ある書として後世に大きな影響を与えたが、現存する数種の写本は不完全で内容にも差がある。成立年代は不明であるが、2世紀にはすでに存在していたと推測され、古来から作者は聖仙バラタBharataと伝承されている。後世の古典サンスクリット劇の創作と鑑賞の規範となった各種の理論、すなわち劇場の規模、舞台装置、衣装、演技、俳優、観客、劇の構造と筋の仕組み、登場人物、使用言語の種類とその修辞法や韻律、戯曲の種類などが規定されている。とくに、劇的効果が観客に与える心理的影響を分析、整理した「ラサ」rasa(原義は「味」、転じて情調)の理論は、後世の戯曲のみならず、韻文学を含めたインド古典文学の理論体系の中核となった。
[町田和彦]
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[インド劇の起源]
伝説によれば,バラタ仙が梵天の命によって神々のために戯曲を創始し,これを人間界に伝えたのだという。インドの最古にして最も権威ある演劇論書は,このバラタ仙の名を冠して《バラタのナーティヤ・シャーストラBhāratīya Nāṭya‐śāstra》とよばれ,天界の演劇法を人間界に適応するように改めたものといわれている。しかし,このような伝説的起源は別としても,インド劇の歴史的起源に関する的確な証拠は見当たらない。…
…その一部である声明は中国を経由して日本に伝えられ,今日まで伝承されている。 インドの音楽理論は独特なもので,最古の楽劇論書《ナーティヤ・シャーストラ》には7声,22律の理論を含む詳細な楽理の体系が展開されている。13世紀初頭に著された楽書《サンギータ・ラトナーカラ》はそれ以前のインド音楽の大要を記した貴重な文献である。…
…起源や成立は不詳。《ナーティヤ・シャーストラ》を基本とするヒンドゥー教社会におけるインドの舞踊の特徴と,ムガル王朝期のペルシア的な舞踊の特徴を兼ねそなえた舞踊である。歴史的には16世紀から18世紀にかけての細密画の中に,カタックの前身といえる舞踊の絵があり,その後,現在のカタックへと発展していったことがうかがわれる。…
※「ナーティヤシャーストラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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