ニェゴシュ(英語表記)Petrović Njegoš

改訂新版 世界大百科事典 「ニェゴシュ」の意味・わかりやすい解説

ニェゴシュ
Petrović Njegoš
生没年:1813-51

ユーゴスラビアの文学者。モンテネグロの生れ。1830年に叔父の跡をついでモンテネグロの聖俗界の長であるブラディカ主教)に就任(ペータル2世Petar Ⅱとよばれる),三権分立の制度を導入するなど近代化に尽くす。若くして詩作を始めたが,2度のロシア旅行で見聞を広め,《小宇宙の光》(1845)に天国を追放された人間の悲しみを,最高傑作の叙事詩栄光山並み》(1847)では民族の解放と自由の尊さを雄渾無比にうたいあげた。遺骨はモンテネグロのロブチェンLovćen山上(1749m)の霊廟に収められ,一種の巡礼地となっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニェゴシュ」の意味・わかりやすい解説

ニェゴシュ
にぇごしゅ
Petar Petrović Njegoš
(1813―1851)

バルカン半島西部の山国、モンテネグロ(ツルナ・ゴーラ)の詩人、主教、国家元首。1830~51年国王ペタル2世として君臨し、トルコオーストリアの圧力に対抗した。ツェチニェに最初の学校と印刷所を創立し、元老院制、裁判所を設けるなど、国の近代化に努めた。詩業としては、神とサタン闘争を主題に、理性と宇宙秩序の勝利の理念で貫いた宗教的寓意(ぐうい)叙事詩『小宇宙の光』(1845)、17世紀のモンテネグロの回教徒撲滅事件に材をとり、スラブ民族の解放と団結を訴えた劇詩『山の花冠』(1847)、モンテネグロ民族の栄誉と騎士道を歌う劇詩『偽皇帝、小人シチェパン』(1851)が主要作。

[栗原成郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニェゴシュ」の意味・わかりやすい解説

ニェゴシュ

「ペタル2世」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のニェゴシュの言及

【モンテネグロ】より

…後を継いだペータル2世(在位1830‐51。詩人としてニェゴシュの名で呼ばれる)は,集権化を進めて行政面の近代化を図った。ペータルは政治家としてよりも詩人として知られている。…

【ユーゴスラビア】より


[近代文学の展開]
19世紀のロマン主義がまず各民族の自覚を促すと,いまなお人々に愛誦される佳作がいくつか生まれた。クロアチア人のガイが主唱するイリュリア運動に参加したマジュラニッチは,トルコ人の非人間性を描いた叙事詩《スマイル・アガ・チェンギッチの死》(1846)を発表し,〈スロベニアのプーシキン〉といわれたプレシェレンは愛国的な抒情詩《ソネットの花環》(1834)を,モンテネグロの聖俗界に君臨したニェゴシュ(ペータル2世)はオペラ形式の英雄叙事詩《栄光の山並み》(1847)を完成した。当時ウィーンにあってセルビア人の口承文芸を収集・刊行していたカラジッチは,大胆にセルビア語を簡素化した。…

※「ニェゴシュ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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