ギリシア神話に登場する女性。リュディア(小アジア西部)のシピュロス山付近の王タンタロスの娘。テーバイ王アンフィオンAmphiōnの妻。夫との間に7男7女をもうけた彼女は,アポロンとアルテミスの2人しか子どものいない女神レトより自分のほうがまさっていると誇ったため,怒った女神はわが子に命じて,ニオベの息子はアポロンに,娘は女神アルテミスに射殺させた。一度にすべての子どもを失ったニオベは泣きつづけるうちに石と化し,それを風が彼女の故郷のシピュロス山上に運んだが,なおも涙を流しつづけたという。リュディアの生れで,みずからシピュロス山に登ったことのあるパウサニアス(2世紀)は,伝説の〈ニオベ石〉は近くで見ればただの岩だが,遠見には,頭をたれて涙にくれる女の姿に見える,とその著書《ギリシア案内記》に書き残している。
執筆者:水谷 智洋
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ギリシア神話のタンタロスの娘。竪琴(たてごと)の名手アンフィオンの妻で、2人の間には7男7女、あるいは10男10女、または六男六女が生まれたという。このようにニオベはとにかく子宝に恵まれていたので、ゼウスとの間にアポロンとアルテミスの一男一女しかいないレトよりも自分のほうが優れていると誇った。そこで怒ったレトはわが子に復讐(ふくしゅう)を求め、アポロンはニオベの男の子を、アルテミスは女の子をそれぞれ射殺した。一説には父親のアンフィオンもこのとき射殺されたと伝えられている。母親のニオベは嘆き悲しんで石に身を変じたが、その石はリディアのシピロス山上にあるという。あるいは、ニオベは父タンタロスの住むシピロス山へ逃れてそこで泣き続け、石と化したともいう。この山には後世までその石があったといわれ、パウサニアスなどは『ギリシア誌』に実際にこれを見たと記している。ニオベの伝説は、ホメロスを初見として文学の素材に繰り返し用いられ、また壺絵(つぼえ)や彫像などにも、アポロンとアルテミスに射られるニオベの子供が好んで描写されている。
[伊藤照夫]
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…ギリシア伝説で,テーバイ王ゼトスの妻。ゼトスとのあいだに一子イテュロスをもうけたが,夫の双生の兄弟アンフィオンの妻ニオベに多くの子どもがあるのを嫉妬し,イテュロスとともに養育されていたニオベの長男の殺害をくわだてた。しかし夜陰に乗じて子どもらの寝室にしのびこんだ彼女は,誤ってわが子を殺したため,悲嘆にくれているところをゼウスによってウグイス(ギリシア語でアエドン)に変えられた。…
…もともとギリシア先住民族の豊穣(ほうじよう)の女神であったと考えられるアルテミスは,産褥(さんじよく)の守護神,人間と野獣に多産をもたらす女神としてもあがめられた。と同時に,女たちに遠矢を射かけて突然の死をもたらす女神でもあり,タンタロスの娘ニオベがレトには2人の子しかないとあざけったときには,アルテミスは母親の名誉のために,アポロンと協力してニオベの6男6女を射殺したという。彼女はまた〈青年の養育者〉として共通の職能をもつ女神ヘカテと,さらにはアポロンが太陽神と同一視されるようになったのにともない,月の女神セレネSelēnēと,しばしば混同ないし同一視された。…
…後に神々が肉片を集めてつなぎ生命を吹きこんだとき,左肩の部分が不足したため,代りに象牙をはめこんだ。姉ニオベが思い上がりのゆえに女神レトの怒りに触れて夫と子たちを失って自らも石に化した話を聞いたとき,人々はニオベを怒ったがペロプスだけはニオベのために泣いて上衣を脱ぎ,左肩の象牙をあらわにはだけた。ここで左肩をはだけるのは悲しみの姿態である。…
※「ニオベ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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