日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネイサンズ」の意味・わかりやすい解説
ネイサンズ
ねいさんず
Daniel Nathans
(1928―1999)
アメリカの微生物学者。デラウェア州ウィルミントンに生まれる。デラウェア大学、ワシントン大学に学び、1954年博士号を取得した。ニューヨークのコロンビア・プレスビテリアン医療センター、国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)で医療に従事したあと、1959年にロックフェラー研究所(現、ロックフェラー大学)の客員所員となった。1962年ジョンズ・ホプキンズ大学の微生物学助教授、ついで1967年に教授となった。
1960年代中ごろからウイルス性腫瘍(しゅよう)の発生メカニズムの研究を始めたが、ジョンズ・ホプキンズ大学の同僚H・O・スミスが制限酵素の分離に成功したことを知り、その制限酵素を研究に利用することにした。腫瘍ウイルスSV40のデオキシリボ核酸(DNA)を制限酵素によって11個の断片に分離し、次に断片の配列順序を決定し、遺伝子地図をつくることに成功した。この研究手法は分子遺伝学に大きな進歩をもたらし、遺伝子工学の基礎技術となった。この業績により、制限酵素の機能を解明したアルバー、およびスミスとともに1978年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
[編集部 2018年9月19日]