ハキリバチ

改訂新版 世界大百科事典 「ハキリバチ」の意味・わかりやすい解説

ハキリバチ (葉切蜂)

膜翅目ハナバチ上科ハキリバチ科Megachilidaeの昆虫総称体長5~30mm。母バチは花からもち帰った花粉と花みつをこね合わせてだんごをつくり,房室に蓄え,その上に産卵する。孵化ふか)した幼虫は,貯蔵された花粉だんごを食べて成長する。巣は竹筒や,樹木空洞,ちょっとした自然物の隙間などを利用して設けられることが多いが,ときには,土中坑道を掘って巣をつくる種類もいる。

 多くの種は,切りとってきた草や木の葉片を重ね合わせてコップ状の房室をつくる。葉片は卵形円形の2種類に切断されていて,卵形のものは花粉だんごを蓄えるコップの周囲や底の原料となり,円形の葉片はその上に卵を産みおえた後の蓋となる。ハキリバチの仲間でも,ヤニハナバチ属Chalicodomaの種は,葉片の代りに,もっぱら樹脂や,葉片をかみつぶしたパルプ,泥などを利用する。また,ツツハナバチ属Osmiaの多くの種は,竹筒に葉片をかみつぶしたパルプで仕切壁を設けて房室をつくる。

 巣づくりのために,園芸用の草木の葉などに被害を与えるが,一方では,植物の授粉に大きな役割も果たしていると考えられている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハキリバチ」の意味・わかりやすい解説

ハキリバチ
はきりばち / 葉切蜂
leaf-cutter bee

昆虫綱膜翅(まくし)目ハキリバチ科のうちのハキリバチ属Megachileのハナバチの総称。植物の葉を丸く切って巣に持ち帰り、多数の葉をあわせて幼虫室をつくりあげる。世界各地に広く分布し、種類も多い。日本には25種を産する。これらの雌バチの腹面には特有の剛毛が櫛歯(くしば)状に数列並び、これに花粉をつけて巣に運ぶ。バラハキリバチM. nipponicaやバラハキリバチモドキM. tsurugensisは日本にもっとも普通な種類で、前者は好んでバラの葉を切るので、ときに害虫扱いされる。しかし、ハキリバチは一般にキク科やマメ科植物の花粉媒介昆虫として有益である。近年、分類学上オオハキリバチ、ネジロハキリバチ、ヒメハキリバチなどは別属のChalicodomaに移された。これらのハチにとっては重要な器官である大あごの形態が異なるからである。日本でリンゴやスモモの花粉媒介に増殖・利用されているマメコバチはハキリバチに近縁なハナバチである。ハキリバチの天敵としては、近縁属のトガリハナバチ属Coelioxysや双翅目のツリアブヤドリバエなどが知られている。

[平嶋義宏]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハキリバチ」の意味・わかりやすい解説

ハキリバチ
leaf-cutting bee

膜翅目ハキリバチ科に属する昆虫のうち,雌が植物の葉片を使って巣をつくるものの総称で,大部分がハキリバチ属 Megachileに属する。小~中型のハナバチで体は比較的短くて太く,頭部は大きい。雌の大腮は葉を切断するのに適した構造となっていて,これで葉を円形ないし卵形に切取り,巣に運んで円筒形の育房をつくる。育房内には花粉と花蜜を混ぜた団子をたくわえ,そこに産卵する。また雌の腹部下面には花粉採集用のはけ状集粉毛がある。バラハキリバチ M. nipponicaは体長 13mm内外,体は黒色で胸部背面が黄褐色毛におおわれる普通種で,バラの葉を好んで切取ることで知られる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ハキリバチ」の意味・わかりやすい解説

ハキリバチ

膜翅(まくし)目ハキリバチ科の昆虫の総称。ミツバチ類に似るが,体は頑強で翅脈が異なり,単独生活をする。一般に植物の葉を半円形に切り取り,枯木の穴,壁のすき間などにびん状の小室を数個重ねて巣を作り,花粉や蜜をたくわえて幼虫の餌にするが,樹脂を集めて営巣するもの,土中に穴をあけるもの,カタツムリの殻に泥で巣を作るもの,他のハキリバチ類の巣に寄生するものなどいろいろある。園芸害虫とされるものが多いが,ツツハナバチ類は果樹の花粉の媒介に利用される。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android