動植物などから生まれた生物資源を燃焼させたり、ガス化したりする発電。2020年度の発電量は、再生可能エネルギーの中では太陽光、水力に次ぐ規模だった。木材のほか、生ごみなどの廃棄物や下水汚泥を使う。家畜の排せつ物や麦わらといった資源を生かした農山漁村での事業が可能な一方で、収集や管理のコストが課題になっている。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
廃材、穀物、生活ごみなど生物由来の有機物資源(バイオマスbiomass)を原料や燃料として発電すること。バイオマスを直接あるいはガス化して燃焼させ、生み出した水蒸気やガスでタービンを回して発電する。木材などの木質系バイオマスは成長過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するため、バイオマスを原料や燃料に使って二酸化炭素を排出しても、吸収と排出が相殺され(カーボンニュートラル)、地球環境に優しい発電とされる。化石燃料と違ってバイオマスは枯渇することがなく、風力発電や太陽光発電と同じ再生可能エネルギーの一つである。日本では2012年(平成24)に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)の対象となり、2012年に168億キロワット時であったバイオマス発電量は2020年(令和2)に288億キロワット時に増加。2030年には400億キロワット時を超える見込みで、水力、太陽光に次ぐ再生可能エネルギー源として期待されている。バイオマス発電の買取価格(税込み)は当初、1キロワット時あたり24円を軸にした固定価格(資源の種類、発電規模ごとに異なる)であったが、発電所の急増で、2018年度から価格引下げや入札制を実施。2022年度からは市場売電価格にプレミアム(補助額)を上乗せするフィード・イン・プレミアム制度(FIP:Feed-in Premium)を導入し、再生エネルギー導入の拡大を目ざしている。買取期間は20年。2025年には、愛知県田原(たはら)市(最大出力11.2万キロワット)や香川県坂出(さかいで)市(最大出力7.5万キロワット)で、バイオマス専焼の大型発電所が稼働する見通しである。
風力発電や太陽光発電は気象条件に左右されるが、バイオマス発電は安定的な電力供給が可能である。廃材など未利用資源を原料や燃料とするため、廃棄物の減少や再利用につながり、循環型社会の構築に役だつ。また、間伐材、稲わら、家畜糞尿(ふんにょう)などを活用することで農山村の活性化にもつながる。バイオマス発電と火力発電は、燃料がバイオマスか化石燃料かの違いがあるものの、タービンを回す発電の仕組みはほぼ同じであるため、老朽化した火力発電所を転用できる利点もある。一方、海外ではトウモロコシやサトウキビなどの食物を原料や燃料に使うケースが多く、穀物相場の高騰、野放図(のほうず)な農地拡大による自然破壊などの問題が起きている。またバイオマスは広域に分散していることが多く、収集・運搬の費用がかさみ、発電コストが高くなる欠点もある。
バイオマスには多くの種類があり、資源の由来や燃料の種類によって分類されることが多い。資源の由来では、(1)木屑(きくず)、建設廃材、生ごみ、廃食用油(廃食油)、下水汚泥などの「廃棄物系」、(2)稲わら、もみ殻、家畜糞尿、間伐材などの「農林系」、(3)トウモロコシ、サトウキビ、大豆、菜種などの「栽培作物系」の三つに大別される。燃料に基づく分類では、(1)間伐材や建設廃材などをおもに燃焼して使う「木質燃料」、(2)サトウキビ、トウモロコシ、イモなどからエタノールを取り出して使う「バイオ燃料(バイオエタノール)」、(3)生ごみ、糞尿、海藻などを発酵させる「バイオガス」の3種類に分けられる。
[編集部 2022年4月19日]
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