占有者にとって不要とみなされ,処理する目的で排出または廃棄した物,あるいは保管されている物をいう。ごく一般的なイメージでは廃棄物=ごみであるが,廃棄物の取扱いについてはおもに〈廃棄物の処理及び清掃に関する法律〉(〈廃棄物処理法〉と略される)により定められており,その定義によれば廃棄物とは,ごみ,粗大ごみ,燃殻,汚泥,糞尿(ふんによう),廃油,廃酸,廃アルカリ,動物の死体その他の汚物または不要物であって,固形状または液状のもの(放射性物質およびこれによって汚染されたものを除く)をいうとされている。液状のものについては処理により汚水,または廃液として扱われる場合がある。廃棄物を分類すると図のようになるが,このうち放射性廃棄物とは,放射性物質およびこれによって汚染された物をいい,その取扱いは,特別法により規制されている。放射性廃棄物以外の廃棄物を一般の廃棄物といい,これが〈廃棄物処理法〉が規定している廃棄物である。一般の廃棄物のうち事業活動に伴って生じた廃棄物を事業系廃棄物,それ以外の家庭を中心とする人の生活に伴って発生する廃棄物を生活系廃棄物または家庭系廃棄物という。さらに事業系廃棄物のうち法律で定められた19種の廃棄物を産業廃棄物と呼び,このうち,燃殻,汚泥,廃酸,廃アルカリ,鉱滓(こうさい),ばい塵については,有害物質の濃度が判定基準を超えるものを有害産業廃棄物として一般の産業廃棄物と区別し,よりきびしい規制を行っている。事業者は,その産業廃棄物をみずから処理しなければならないことになっている。産業廃棄物以外の廃棄物を一般廃棄物と呼び,市町村が原則として市町村の区域全域を対象として,一定の処理計画を定め,一般廃棄物の処理を行う。
〈廃棄物処理法〉による廃棄物の分類は,必ずしも処理,処分の技術上の観点からなされているわけではないため,次のようないくつかの問題が指摘されている。すなわち,(1)有価物は廃棄物でないことになるが,有価物とそうでないものとの線引きがむずかしい,(2)一般廃棄物と産業廃棄物の線引きがむずかしい,(3)液状物は,廃酸,廃アルカリと,汚水または廃液との区別ができないケースがある,(4)汚泥は,廃酸,廃アルカリとの区別が明確でなく,また内容物も多種多様で,その処理も内容物の化学物理組成により異なる,などである。
生活環境の保全および公衆衛生の向上を図るために,廃棄物が発生してから最終的に処分されるまでの行為,すなわち,保管,収集,運搬,中間処理および最終処分と呼ばれる一連の流れを廃棄物処理という。このうち中間処理は,廃棄物を物理的,化学的,または生物学的な方法により,減量化,安定化を目的として変質させることをいう。最終処分は最終的に環境中に排出することで,埋立処分と海洋投入処分がある。
→ごみ →産業廃棄物 →放射性廃棄物
執筆者:田中 勝
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