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バフチン Bakhtin, Mikhail

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

バフチン
Bakhtin, Mikhail

[生]1895.11.17. オリョール
[没]1975.3.7. モスクワ
ロシアの文芸学者。フルネーム Mikhail Mikhailovich Bakhtin。ペトログラード大学文学部卒業。『ドストエフスキーの創作の諸問題』Problemy tvorchestva Dostoevskogo(1929)でフョードル・ミハイロビッチ・ドストエフスキーの小説の「多声性」を分析し,文学作品の構造的研究に清新な視点を導入した。大著『フランソワラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』Tvorchestvo Fransua Rable i narodnaya kul'tura srednevekov'ya i Renessansa(1965)では民衆の笑いの文化を公式の硬直した文化に対比させるなど,骨太の雄大な文明史的視点を提示した。

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デジタル大辞泉の解説

バフチン(Mikhail Mikhaylovich Bakhtin)

[1895~1975]ソ連文芸学者。幅広い知識のもとに近代の文学論の狭隘(きょうあい)さを指摘、言語学民俗学歴史学などにも大きな影響を与えた。作「フランソワ=ラブレーの作品と中世・ルネサンスの民衆文化」など。

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百科事典マイペディアの解説

バフチン

ロシア(ソ連)の文芸学者。1920年代に文筆活動を始める。《ドストエフスキーの創作の諸問題》(1929年)では,ドストエフスキー作品のもつポリフォニックな性格を解明するとともに,独自の〈対話の哲学〉を提示。
→関連項目散文トドロフロシア・フォルマリズム

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世界大百科事典 第2版の解説

バフチン【Mikhail Mikhailovich Bakhtin】

1895‐1975
ソ連邦の文芸学者。1920年代に文筆活動を始める。バフチンの名で出た著作以外に,《フロイト主義》(1927)や《マルクス主義と言語哲学》(1929)をはじめとするV.N.ボロシノフ名義の一連の著作,《文学研究における形式的方法》(1928)といったP.N.メドベジェフ名義の著作も事実上バフチンのものであるとの説もある。その場合には,〈マルクス主義的記号学〉の主唱者でもあり,ロシア・フォルマリズムを内在的に批判した代表的文献の著者でもあったということになる。

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大辞林 第三版の解説

バフチン【Mikhail Mikhailovich Bakhtin】

1895~1975) ソ連の文学理論家。ラブレー研究のほか、対話理論・ポリフォニー論の創始者としても知られる。記号論のタルトゥー学派の祖。著「ドストエフスキーの詩学」「フランソワ=ラブレーと中世ルネサンスの民衆文化」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

バフチン
ばふちん
Михаил Михайлович Бахтин Mihail Mihaylovich Bahtin
(1895―1975)

ソ連の文芸学者、美学者。1920年代初頭より、文学・美学関係の著作を数多くものしていたが、当時公刊されたのは、ドストエフスキーの作品がもつポリフォニー的性格を解明した『ドストエフスキーの創作の諸問題』(1929)と、数編の小論のみである。その他の著作は、おもに政治的理由のために出版されず、前記の著書の改訂版『ドストエフスキーの詩学の諸問題』が出た1963年以降になってようやく日の目をみている。独自の対話論を根底に据え、文芸学、文学史、芸術史、民俗学、言語学、心理学、歴史学、思想史等々のきわめて幅広い知識を駆使したその仕事は、旧ソ連諸国内のみならず世界的にもひときわ高い評価を受けている。主著としては、上述のドストエフスキー論のほか、ラブレーに対する狭隘(きょうあい)な近代化解釈を「民衆の笑い」論、カーニバル論を軸にして打ち砕いた『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』(1965)があげられる。また、小説のことば論関係の著作その他を集めた『文学と美学の諸問題』(1975)と『言語作品の美学』(1979)が、死後に出版されている。
 さらに、今日では、『フロイト主義』(1927)や『マルクス主義と言語哲学』(1929)をはじめとするボロシノフ名義の著作、『文学研究における形式的方法』(1928)といったメドベジェフ名義の著作も、事実上バフチンのものである、との説が有力になっている。この説に従う立場をとるならば、バフチンは「マルクス主義的記号学」の主唱者でもあり、ロシア・フォルマリズムを内在的に批判した代表的人物でもあった、ということになる。[桑野 隆]
『新谷敬三郎訳『ドストエフスキイ論――創作方法の諸問題』(1968・冬樹社) ▽川端香男里訳『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』(1974・せりか書房) ▽ヴォロシノフ、バフチーン著、桑野隆訳『マルクス主義と言語哲学』(1976・未来社) ▽伊東一郎他訳『ミハイル・バフチン著作集』全8巻(1979~1988・新時代社) ▽桑野隆著『バフチン――〈対話〉そして〈解放の笑い〉』(1987/新版・2002・岩波書店)』

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世界大百科事典内のバフチンの言及

【散文】より

…フローベール以後の散文は,こうして人間と事物の具体性から離れた,表現の過剰に悩んでいるといってよい。小説【針生 一郎】
[散文理論の展開]
 散文の理論的な究明は,シクロフスキーなどのロシア・フォルマリズムの文学研究に端を発したが,M.M.バフチンによって独自の展開を遂げた。バフチンは,フォルマリズムの散文研究が,詩的言語論を前提としその適用によって散文を位置づけようとするのに反対し,散文と詩における言語機能の基本的な違いに着目する。…

【詩学】より

…そのほか,S.エイゼンシテインはモンタージュ論により映画の詩学の道を切り開き,V.Ya.プロップは魔法昔話の一般構造式を定式化している。 M.M.バフチンはフォルマリズムのように異化の手法を絶対視せず,共創造・再創造の理論を提起した。彼は作品を形式的構造に還元せずに作者・主人公・読者の参加のもとに成立すると考えた。…

【ドストエフスキー】より

… しかし,長く続いたこのドストエフスキー観も,1970年ころから変化を見せ,ドストエフスキー文学がさまざまな新しい知的方法論の実験材料として利用される動きが出てきている。バフチンの《ドストエフスキーの創作の諸問題》(1929。邦訳1968)がこの動きを先導している。…

【翻訳】より

…一般に文学の新しい言葉も,そうしたなかから生み出されるのである。すでにアリストテレスの《詩学》も異国の珍しい言葉の喚起力に注目しているし,ソビエトの文芸学者M.M.バフチンは言語と言語の接触・混交から新しい言語が生み出されることを自己の言語論の原理としている。異質の文化を担った異質の言語と言語が出会う場合,100%の翻訳可能性,〈正解〉は絶望的となるが,実はそうした場合の翻訳不可能性とそれから生じる一種の〈曲解〉こそ翻訳を受容する言語と文化に新しい創造性をもたらすということができる。…

【ロボティクス】より

…従来,ロボットの設計・製作・制御に重点がおかれていたため,ロボット工学を指す場合が多いが,近年,産業面以外の応用の議論が盛んになされ,ロボットに関連したさまざまな科学研究を総じて〈ロボティクス(ロボット学)〉と呼ぶ傾向が強くなってきている。現在,工場などで利用されている産業用ロボットは,一般大衆がイメージするロボットから程遠く,後者は主に大学や研究所などで〈自律ロボット〉として研究対象となっている。…

※「バフチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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