バーセルミ(読み)ばーせるみ(その他表記)Donald Barthelme

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バーセルミ」の意味・わかりやすい解説

バーセルミ
ばーせるみ
Donald Barthelme
(1931―1989)

アメリカ短編作家、小説家。著名な建築家を父とし、ヒューストン大学在学中から、映画・音楽批評、文芸誌編集長と幅広く活動したが、現代美術館ディレクターを経てニューヨークに渡ってからは作家として自立。『ニューヨーカー』誌を中心に、哲学的であると同時にポップでおかしい短編を次々と発表し、知的で感覚的な若い層の熱い支持を受けた。現代に乱れ飛ぶことばの断片コラージュ風に貼(は)り合わせてみせる彼のアートは、しばしばシュールな情景を扱いながら、現代の都市生活の日常を奇妙なリアリティーを込めてすくいあげる。アカデミックな世界での評価は非常に高く、バースらとともにニューフィクション旗手と目された。短編集に『帰れ、カリガリ博士』(1964)、『口に出せない習慣、奇妙な行為』(1968)、『都市生活』(1970)、『悲しみ』(1972)など、中・長編に『雪白姫(ゆきしろひめ)』(1967)と『死父』(1975)および遺作となった『王』(1990)がある。

[佐藤良明]

『志村正雄訳『帰れ、カリガリ博士』(1980・国書刊行会)』『柳瀬尚紀訳『王』(1995・白水社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バーセルミ」の意味・わかりやすい解説

バーセルミ
Barthelme, Donald

[生]1931. ペンシルバニア,フィラデルフィア
[没]1989.7.23. テキサス,ヒューストン
アメリカの小説家。複雑な現代社会の全貌リアリズムで描くことは不可能と考え,断片を連ねたコラージュの方法を多用し,ときにはイラストや言葉遊びを用いた特異な作品を発表する。短編に『帰れ,カリガリ博士』 Come Back,Dr.Caligari (1964) ,『都会生活』 City Life (70) ,『悲しみ』 Sadness (72,全米図書賞) ,『罪深き愉しみ』 Guilty Pleasures (74) ,『アマチュアたち』 Amateurs (76) など。中編にディズニー映画のパロディ『雪白姫』 Snow White (67) ,『死父』 The Dead Father (75) ,『楽園Paradise (86) などがある。いずれも皮肉な目で現代社会をみつめた都会的な味の作品。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「バーセルミ」の意味・わかりやすい解説

バーセルミ
Donald Barthelme
生没年:1931-89

アメリカの小説家。テキサス州のヒューストン大学を卒業。美術館に勤めたのち1962年以来ニューヨークに住んで,おもに《ニューヨーカー》誌に寄稿する短編作家として活躍。部屋の壁に記念品を雑然とピンでとめるように,現代生活の断片を慣習的な配列法や分類法に従わずに作品に詰め込むコラージュ的手法をとる。長編も2編試みているが,《帰れ,カリガリ博士》(1964)から《都会生活》(1970)に至る短編集が最も注目すべき成果であろう。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「バーセルミ」の意味・わかりやすい解説

バーセルミ

米国の小説家。雑誌《ニューヨーカー》を中心に活動。短編が多い。ポストモダン小説の代表ともいわれ,作風は実験的・遊戯的・断片的・パロディ的である。即興性や虚構性を強調したメタフィクション作家としても名高い。長編として《白雪姫》(1967年),《死父》(1975年),《パラダイス》(1986年)など。短編集として《帰れ,カリガリ博士》(1964年),《口に出せない習慣,不自然な行為》(1968年),《罪深き愉しみ》(1974年),《アマチュアたち》(1976年)など。
→関連項目アービング

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android