パロール(英語表記)parole

翻訳|parole

デジタル大辞泉 「パロール」の意味・読み・例文・類語

パロール(〈フランス〉parole)

言語学者ソシュール用語。「げん」と訳される。社会制度としてのラングに依拠しながら、個々人が個々の場面で行使する言葉。→ランガージュラング

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「パロール」の意味・読み・例文・類語

パロール

  1. 〘 名詞 〙 ( [フランス語] parole ) 制度化された体系としての言語であるラングに対し、特定の時、特定の場で個人が具体的に行なう言語の使用をいう。ソシュールによって命名された。→ラング

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パロール」の意味・わかりやすい解説

パロール
parole

ソシュールの用語。彼は複雑で混質的なランガージュ (言語活動) を,本質的,社会的,等質的,体系的なラングと,副次的,個人的,非等質的,遂行的なパロールに分けた。これは言語研究上,非常に大きな意味をもつが,必ずしも明確に説かれていない部分もあり,数々の論争を引起した。パロールについていえば,(1) 「個人的」という概念が,個人の発話とか,ラングの個人的使用といった,そのなかに社会習慣的特徴を含んだ意味での「個人的」なのか,社会に対立するばらばらな意味の「個人的」なのか,(2) これと関連して,単語はラングに属するが,はどちらに属すると考えているのか,(3) 「遂行的」という言葉はほぼ発話にあたる面をさしているようであるが,了解活動は含まれないのか,などの問題がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パロール」の意味・わかりやすい解説

パロール
ぱろーる
parole フランス語

ランガージュ/ラング/パロール

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のパロールの言及

【行刑】より

…懲らしめによる威嚇と,規律による行動の外的統制の理念がそれを支えた。 19世紀後半には,アメリカの保護観察を伴った宣告猶予であるプロベーションprobationとそれに学んだヨーロッパ大陸の執行猶予制度が,受刑者を改善するよりも悪風に感染させるだけであると非難されていた短期自由刑の弊害を避けるために発展し,またオーストラリアなどの流刑地で行われた累進処遇制・仮釈放制や,保護観察を伴った仮釈放であるパロールparole,あるいは早期釈放を監獄内規律維持に使う善時good time制が拘禁自体の回避策として発展した。以上の実刑回避にとどまらず積極的に犯人改善を目ざしての処遇体制も,70年のシンシナティ宣言のころから明確になり始める。…

【更生保護】より

…1790年(寛政2)に作られた石川島人足寄場は,無宿者や入墨または敲(たたき)の刑に処せられた者を収容して職業補導,授産,教養訓練等を行ったもので,いわば幕府による更生保護施設であった。欧米では,18世紀後半から出獄者の保護の団体が慈善目的で作られていたが,近代的な社会内処遇の制度であるパロール(保護観察付仮釈放,18世紀末以来)や,プロベーション(保護観察付刑の猶予,19世紀半ば以来)の制度も整ってきていた(〈行刑〉の項参照)。 明治維新後,1872年の監獄則は刑余者で生計の見通しのない者を懲治場にとどめるという規定を定めたが翌年施行が停止され,1882年施行の〈改正監獄則〉が,刑期満限の後頼るべき所のない者はその情状により監獄の別房にとどめ生業を営ましめるとする別房留置の制度を発足させた。…

【保護観察】より

…強制的に科される点で任意保護である狭義の更生保護活動と異なる。
[沿革]
 保護観察制度は,おもにイギリス,アメリカで発達したプロベーションprobationとパロールparoleの制度に起源をもつ。プロベーションは,刑の執行をせずにはじめから行われる保護観察で,刑の執行猶予,宣告猶予や起訴猶予に伴って行われる。…

【ソシュール】より


[一般言語学]
 弱冠21歳で発表した《インド・ヨーロッパ諸語における母音の原初体系に関する覚書Mémoire sur le système primitif des voyelles dans les langues indo‐européennes》(1878)は少壮(青年)文法学派の業績の一つと考えられていたが,これはすでに従来の歴史言語学への批判の書であり,その関係論的視座は1894年ころまでに完成したと思われる一般言語学理論と通底するものであった。ソシュールはまず人間のもつ普遍的な言語能力・シンボル化活動を〈ランガージュlangage〉とよび,これを社会的側面である〈ラングlangue〉(=社会制度としての言語)と個人的側面である〈パロールparole〉(=現実に行われる発話行為)とに分けた。後2者は,コードとメッセージに近い概念であるが,両者が相互依存的であることを忘れてはならない。…

※「パロール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android