改訂新版 世界大百科事典 「ヒトモトススキ」の意味・わかりやすい解説
ヒトモトススキ
twig-rush
saw-grass
Cladium jamaicense Cranz ssp.chinense(Nees) T.Koyama
海岸に近い湿地に生える大型のカヤツリグサ科の多年草。異名のシシキリガヤは本種の丈夫な葉が鋭い鋸歯縁をもっていてイノシシさえも切るほどだ,という意味である。短い根茎があって大きな群落を作る。茎は円柱形で太く,高さ2m余りに達し,節があり,葉をつける。葉は幅1cmくらいの広線形で,長さ1m近くにもなり,硬く,革質,やや灰色がかった緑色で,縁にはきわめて鋭い鋸歯がある。8~10月,長さ60cmの大型の円錐花序を出し,褐色で小型の小穂を無数に密生する。関東以西の本州,四国,九州から朝鮮半島南部と中国に分布する。基本変種は両半球の熱帯に広く分布する。
ネビキグサMachaerina rubiginosa(Spreng.)
T.Koyamaは本種にやや近縁の1種で,ネビキグサ属に入る。本州中部の太平洋岸からスリランカ,インドネシア地方に分布し,円柱形の葉がアンペラソウに似ているので,アンペライの別名があるが,まぎらわしい。ネビキグサではアンペラ袋(アンペラソウで織った袋)は作らないが,インドネシアでは安物の敷物を作るのに利用される。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報