ビャリャツキ(読み)びゃりゃつき(英語表記)Ales Bialiatski

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビャリャツキ」の意味・わかりやすい解説

ビャリャツキ
びゃりゃつき
Ales Bialiatski
(1962― )

ベラルーシ人権活動家。人権団体「ビャスナ(春)Viasna」の創設者・代表。ベラルーシ大統領のルカシェンコAlyaksandr Ryhoravich Lukashenka(1954― )に抵抗する反政権派の象徴的存在である。ときに命の危険を顧みずに圧政の実態を世界に発信し、「長年にわたり権力を批判するとともに、基本的人権を守る活動に取り組み、戦争犯罪、人権侵害、権力の濫用を記録するために並はずれた努力を重ねてきた」功績で、2022年のノーベル平和賞を受賞した。ロシアのメモリアルウクライナの市民自由センター(CCL)という二つの人権団体との共同受賞。ロシアの協力国、ベラルーシの人権活動家への授与には、ロシアによるウクライナ侵攻に対する平和賞選考委員会の強い非難の意が込められている。

 ロシア北西部のビャルツィリャ生まれ。両親はいずれもベラルーシ人で、1965年に家族とともに帰国。1984年、ベラルーシのゴメリ州立大学を卒業。1980年代なかばから始まったベラルーシ民主化運動のリーダーの一人で、大統領に独裁権を与える憲法改正に反対するため、1996年にビャスナを設立。不当逮捕された民主活動家やその家族らを支援し、政治犯に対する人権侵害や弾圧の実態を記録し、国際社会に発信し続けた。2020年、ベラルーシ大統領選挙の不正で、「ヨーロッパ最後の独裁者」とされるルカシェンコへの抗議活動が全土に広がった際には、抗議集会の開催支援や、逮捕者の人権擁護などで主導的役割を果たした。2011~2014年まで投獄されるなど自身も繰り返し逮捕・収監されており、ノーベル賞受賞時も収監中で、授与式には妻が代理出席した。平和賞選考委員会は、「母国の民主化と平和的発展のために生涯を捧げてきた。人権団体を通じ、政治犯への当局拷問を記録し抗議した」と称えている。ノーベル賞以外に、2020年にライト・ライブリフッド賞を受賞。なお、逮捕・軟禁・弾圧などでノーベル平和賞授与式に出席できなかったのは、ドイツの平和運動家オシエツキ、中国の作家、劉暁波(りゅうぎょうは)、ミャンマーの民主運動家アウンサンスーチーに次いで4人目である。

[矢野 武 2023年2月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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