日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビル風(ビルかぜ)」の意味・わかりやすい解説
ビル風(ビルかぜ)
びるかぜ
building wind
高層建築物の周辺でみられる、建物による風の乱れをいう。風向の変化のほかに風速の強弱によって表される。一般には、高層ビルの周辺で吹く強い風をさすことが多い。
風の強くなる場合として次の三つがある。(1)ビルを風が吹き越す場合、風の当たる前面の屋上付近でもっとも強くなる。(2)風がビルに正面から吹き当たり両側に分かれる場合、その両側で強くなる。(3)ビルを吹き越した風は、ビルの背後で吹き降りてくるが、ビルから一定距離離れた背後の部分では、上空の気流が吹き降りてくるため風が強くなる。
反対に風の弱くなる所は、(1)ビルの風下背後、ビルの近傍。(2)風が吹き当たる前面屋上でも、屋上のすぐ上は風が吹き上げるために、屋上のすぐ近くは風が弱くなる。
風の乱れがみられるのは、風がビルの両側に分かれるビルの両側背後の部分である。風には日変化があり、そのためビルに対する風の相対的関係は時間とともに変わるので、ビル風の様相もそれに伴って変わる。
ビルのつくりだす日影とともに、ビル風はその周辺の住民にさまざまな影響を与えているが、これを防ぐにはアーケードをつくったり、地下道にするなどのくふうがされている場合もある。ビル風の程度は、風洞実験、数値シミュレーションなどによって見当をつけることが可能である。