装飾用、手芸用の飾り玉。宝石、ガラス、ウッド・クリスタル、練り物などで、管状、玉状、輪状、鞘(さや)状、エンボス形(円形の外郭に飾り彫りを施したもの)、涙形(ドロップ形)など、さまざまな形につくった小さな玉のことで、形に関しては年ごとに新しいものが生まれている。最近では石油を原料としたアセチロイドフィルでつくられた軽くて光沢のよいものがある。
[市川久美子]
紀元前3000年ごろから装飾品として存在していた。宝石、貝殻、河真珠、獣骨、角など、自然界の産物を素材としている。前2000年ごろにつくられた、ネットに飾り付けられた青玉のビーズ、トルコ石のビーズの指輪、胸飾りなどが発掘されている。また黒玉(黒曜石)、ガラス、こはく、トルコ石、紅玉、陶質、碧玉(へきぎょく)、めのうなどは、ベルギー人や南部ブルトン人に多く用いられ、ティアラ(正装の場合に用いる冠形をしたもので、宝石などをちりばめてつくる)、ブレスレット、ネックレスなどに利用された。アングロ・サクソン人の墓跡からは、こはくのビーズが多く発見されており、それは武器の装飾として用いられた。16世紀以降、装飾や服飾に盛衰を繰り返しながら、ハンドバッグ、ネックレス、アンクレット、ブレスレット、ティアーラ(おもにくるぶしにつける装飾品)、房類などの小物、またはアクセサリーに色を添えた。18世紀以降になると、服飾として衣服の全面に施されるなど、主として衣服につけることが流行したが、19世紀後半になってやや影を潜めた。そして現代、1970年ごろから流行を始め、まったく新しい感覚と傾向で、衣服の装飾から一般的なアクセサリー、小物類にまで、幅広く利用されている。
[市川久美子]
ビーズを糸に通し、紐(ひも)状や房状にして飾り付けたり、緯糸(よこいと)(ぬき糸)にビーズを通して織り込むビーズ織物、針金に通して造花やブローチ、ネックレスなどを自由に構成するデコレーション・ビーズ、レース糸や穴糸をレース針で編みながら、ビーズを通していく編みビーズなどがある。
服飾としては、布地に図案を描いておき、さまざまな技法でビーズを使って縫い取って表現したり、洋服の縁飾りに縫い取るビーズ単独刺しゅうがある。また他の光る素材を複合して縫い取る刺しゅうもある。光るものを素材として刺しゅうする場合には、ブライト・ワークbright workという名称でよぶ。
[市川久美子]
糸通し穴のついた小さな飾り玉。数珠玉,南京(ナンキン)玉ともいう。ビーズの語源は〈祈り〉で,祈禱の回数をロザリオの玉で数えることに由来する。糸でつないだり,レース編や刺繡(ししゆう)に生かすなどしてアクセサリー,婦人服飾,持物に用いられるほか,玩具,室内装飾などにも使われる。木の実や貝殻,竹,石,骨,ガラス,プラスチックなどを素材とし,表面を真珠のように見せたものなどがある。石や骨を丸く仕上げることは古くから行われ,それらは考古学で〈玉(たま)〉と総称されているが,日本で一般にビーズと呼んでいるのは,13世紀から14世紀ころイタリアやチェコスロバキアで発達したガラス工業によって量産されるようになったグラスビーズのことである。17世紀のイギリスではビーズを使った刺繡絵も製作された。アメリカでは1607年に,ベネチア人のガラス職人がビーズを作ったという。日本では明治初期にチェコスロバキアからグラスビーズが輸入され,上流婦人の洋装にとり入れられるようになった。大正時代後期にはビーズの手芸が流行し,手製の手提袋などが作られた。昭和に入ると国内生産も始まり,ビーズ手芸は子どもたちまで広く普及した。昭和30年代から40年にかけては,ビーズを編み込んだ財布やバッグが大流行し,グラスビーズの黄金時代となった。現在のグラスビーズ国内生産量は120~130t,そのうち60~70%を輸出している(1983)。
執筆者:南本 珠己
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…文様は同心円文や円文が圧倒的に多く,その形態がトンボの目玉に類似するところから,このように通称されているが,文様には線条文なども含まれる。象嵌の技術はかなり高度のもので,エジプト(第18王朝)やメソポタミアで前1500年ころに初めて出現し,以後,首飾のビーズとして東西に広まり,各地で制作された。とくに前6~後3世紀の地中海東岸地域,メソポタミア,イラン高原,戦国~漢時代の中国,イスラム初期のトンボ玉が著名である。…
※「ビーズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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