翻訳|brooch
襟,胸などにつける飾付きの留針。金属だけで作ったもののほか,宝石や布類などで装飾を施したものがある。ヨーロッパ考古学ではフィビュラfibulaと呼び,青銅器時代から中世にいたる,年代差,地方差を示す遺物として重要視されている。フィビュラは針の部分と弓の部分からなり,弓部の端に針部の先をやすめる構造のものが多い。
ミュケナイ時代のギリシアや北イタリアなど南ヨーロッパでは弓部,針部を一体で作り,この構造が青銅器時代を通じて行われたのに対して,北ヨーロッパでは,弓部と針部とを別作りにして組み合わせる構造のものが発達した。
→留具
執筆者:佐原 眞 フィビュラはキトンなどを留めるため,ギリシア,ローマで盛んに用いられたが,ローマでは将校がマントをはおる際に,カメオのブローチで肩に留め,ことにビザンティンではマントの前面を留めるために不可欠となり発達した。中世には14世紀のブリオー,コットなどの男女の衣服の前面を,ブローチないしボタンで留めた。ルネサンス以降,マントの着用が一般に行われなくなると,留金としての実用性はしだいに失われ,帽子をブローチで飾ることが流行した。また靴にもつけられるようになり,もっぱらブローチはアクセサリーとなった。現代ではシンプルなデザインの服装がむかえられるようになり,ネックレスやブレスレット,ペンダントなどとともに,主要なアクセサリーとして普及している。
執筆者:池田 孝江
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
衣服に飾る留め針式の装身具。本来は布や衣服の端を固定する実用的な留め具であったが、装飾がつけられて、おもに上半身に用いる装身具となった。待ち針型、安全ピン型、ばねで挟むタック型などがある。古代エジプトでは魔除(まよ)けの意味をもつスカラベ、ホルス、ウラエウスなどのブローチがあり、古代ギリシアのペローネ、古代ローマのフィブラは一種大型の安全ピンである。ブローチの最盛期はビザンティン時代といわれ、精巧な細工と宝石、七宝(しっぽう)で飾った華美なものが男子服にも流行した。生花や造花のコサージュもブローチの一種で、17~19世紀に流行し、水を入れた小瓶に挿した生花の胸飾り(ブトニエール)も考案された。近世以降、マントの着用が廃れ、衣服が体にそってくると、ブローチは留め具としての実用性を失い、一時はもっぱら帽子の装飾として用いられた。19世紀、男女両用だったブローチは、近代男子服の完成につれて男性には不要となり、婦人専用の装身具として再登場する。ビクトリア朝初期には準宝石や色石、ナポレオン3世期には金のエナメル細工品が流行した。日本に輸入されたのは明治末期で、一部上流婦人の和服の肩掛け留めとして用いられ、昭和の初めに一般化した。現在おもに婦人服の襟や胸元を飾り、打合せを留めたりするが、スカーフや帽子、ベルトなどにも用いる。シャープな印象のピン・ブローチ、プラスチック製などの軽いものなどが若い人に好まれている。
[平野裕子]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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…一度に多量の素材を除去するため,大型でがんじょうな門形構造にすることが多い。ブローチ盤棒状の本体外周に,荒加工から仕上加工を行う刃が寸法順に配列された工具(ブローチという)を用いて,いろいろな断面形状の穴や表面を加工する工作機械。ブローチの1回の運動で高い精度の加工ができるほか,量産用の加工方法としても優れているため,最近広く用いられている。…
…インド西部,グジャラート州南東部の港市。ブローチBroachとも呼ばれる。人口13万3000(1991)。…
…短剣の刃先が戈として使用されたという考えも提出されている。 利器以外の重要な青銅器として,留針(ブローチ)がある。留針は先史・原史時代のヨーロッパでは,着衣にあたっての必需品で,出土量も多い。…
※「ブローチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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