歯切れのよい野菜類を、種々のスパイスを入れた酢に漬けたもの。ガーキン(短小のキュウリ)、キュウリ、小タマネギ、カリフラワー、ニンジン、トマト、ビーツ、インゲン、ピーマンなどを塩漬けののち、香辛料とともに酢漬けにすることで保存性を高め、味に変化をつけたものである。前菜や肉料理、サンドイッチに添えたり、カレーソースの薬味や、みじん切りにしてマヨネーズに加え(タルタルソース)、食欲増進や、味に変化をつけるために用いられる。野菜は完熟していないものが身もしまり、形くずれが少ない。
キュウリのピクルスを例にあげると、まずキュウリ3キログラムをよく洗って水けを除き、沸騰後冷ました10%食塩水に一晩浸しておく。広口のガラス瓶を洗って消毒し、塩漬けキュウリをすきまなく縦に並べる。ほうろう鍋(なべ)に、酢をキュウリの50~25%(好みで増減する)量とスパイス(粒こしょう、ローレル〈ゲッケイジュの葉〉、シナモン、カルダモン、クローブ〈丁字(ちょうじ)〉、唐辛子など)を小袋に入れて加え、煮立て、冷ましたものを前記の瓶に加える。このとき、キュウリが浮き上がって空気に触れないように注意する。酢はフルーツビネガーやワインビネガーが美味であるが、酸度が高いので5%濃度に薄めて用いるとよい。また、雑菌の混入によって異常発酵してガスを発生したものは、酸度があがりすぎて食用不可能になることがあるので、瓶の消毒と煮沸はていねいに行う。銅や鉄の鍋で酢を煮立てたものは、キュウリの仕上がりが黒ずんで見かけが悪く、食欲を減退させる。ピクルスは漬けて1週間後から食べられるが、半年ぐらいまでがおいしい。
ディル(香草)を加えたものはディルピクルスとよばれ、欧米人に好まれる。また、ビーツや赤キャベツのピクルスは鮮やかな色になるので、前菜、サラダ、サンドイッチ、ハンバーガーなどの添え物に効果的である。
[小林文子]
野菜,果物などを酢や塩水に漬け込んだ洋風の漬物,また,その漬汁のこと。香りづけに香辛料や香草を加え,瓶詰などにして保存する。酢漬では,砂糖を加えた甘口のものをスイート,甘くないものをサワーと呼ぶ。欧米ではキュウリ,赤キャベツ,小タマネギ,ビート,カリフラワー,チェリーなどをフルーツ酢,ワイン酢などに漬け,冷肉料理の付合せなどに用いる。また日本ではとくにキュウリのピクルスが好まれ,オードブルやサンドイッチの付合せや薬味にされる。次に,キュウリのピクルスの作り方の一例を示す。(1)小型のキュウリを塩もみしてしばらく置き,水で軽く洗って水気をよくふきとり,煮沸消毒した貯蔵瓶に入れる。(2)酢に少量の砂糖,ベイリーフ,粒コショウ,赤トウガラシなどを加え,煮立てて冷ます。(3)冷めたら,(1)のキュウリが完全に漬かる量を注ぎ入れ,密封して,乾燥した涼しい所に最低1ヵ月間保存する。
執筆者:辻 静雄
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