マイコプラズマ(読み)まいこぷらずま(英語表記)mycoplasma

翻訳|mycoplasma

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マイコプラズマ」の意味・わかりやすい解説

マイコプラズマ
まいこぷらずま
mycoplasma

広義にはマイコプラズマ目Mycoplasmatalesの細菌をさし、狭義ではマイコプラズマ属Mycoplasmaの細菌をいう。多形態性で、小形であるため分類学上の位置について議論はあったが、明瞭(めいりょう)な細胞構造があること、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)の両方を同一細胞中にもつことから細菌とする。

 マイコプラズマ目は次の6属をいう。

(1)スピロプラズマSpiroplasma 11種。生息場所(病原性を含む。以下同)はおもに柑橘(かんきつ)類、トウモロコシダイコンソラマメワサビ

(2)ウレアプラズマUreaplasma 5種。生息場所はヒトやその他の哺乳(ほにゅう)動物の口、呼吸器、尿道。

(3)マイコプラズマMycoplasma 92種。生息場所はヒト、ウシ、ブタ、ニワトリラット、マウスの呼吸器、神経組織、関節、腟(ちつ)。種によっては植物、昆虫。

(4)アコレプラズマAcholeplasma 12種。生息場所は植物、昆虫。

(5)アネロプラズマAnaeroplasma 4種。生息場所はウシ、ヒツジルーメン反芻胃(はんすうい))。

(6)アステロプラズマAsteroplasma 1種。生息場所は下水塵埃(じんあい)。

 マイコプラズマ目の特徴はグラム陰性、細胞壁を欠くが2層の細胞膜に包まれている。小形で多形性、分枝した糸状の細胞は螺旋(らせん)状となる。通常は運動性はないが滑走運動をすることがある。微好気性(通性嫌気性)4属、嫌気性2属がある。ステロイド要求性4属、ステロイド要求性陰性2属がある。一般に宿主(しゅくしゅ)(寄生対象となる生物)域は狭く、ヒトに感染するものは他の動物に感染することはない。

 マイコプラズマ属の特徴は多形態性、球形や短卵形で0.3~0.8マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)、分枝した糸状細胞は150マイクロメートル。通性嫌気性(微好気性)、キノンチトクロムを欠く。培養上の集落コロニー)は目玉焼き状で典型的である。化学有機栄養要求性chemoorganotrophicである。コレステロールを要求する。基準種はマイコプラズマ・ミコイデスM. mycoides

 なお、マイコプラズマ・プネウモニアM. pneumoniaはヒトの肺炎をおこし、ウレアプラズマ・ウレオリテクムU. urealyticumは非淋菌(りんきん)性尿道炎や、不妊症の原因となり、スピロプラズマ・シトリS. citriは柑橘類の黄葉病をおこす。

[曽根田正己]

『輿水馨・清水高正・山本孝史編『マイコプラズマとその実験法』(1988・近代出版)』『『マイコプラズマ感染症の基礎と臨床』(『臨床と微生物』vol.30, No.1・2003・近代出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マイコプラズマ」の意味・わかりやすい解説

マイコプラズマ
mycoplasma

細菌類のなかで最も小さいものの一つ,マイコプラズマ属 Mycoplasmaに属する細菌。広く自然界に分布し,未発見の種も多い。1898年,最初に牛肺疫の病原体である M. mycoidesが分離されたことから,牛肺疫菌類似生物 pleuropneumonia-like organismの語の頭文字をとって PPLOと略称される。大きさは,球形あるいは洋梨形のもので直径 0.3~0.8μm程度,フィラメント状のもので長さ最大 150μmとさまざまである。ほとんどが通性嫌気性で,細胞壁をもたず,小さなコロニーを形成する。細菌ろ過器を通過し,無細胞培地でも成育させることができる。反芻動物,肉食動物,齧歯類の関節や呼吸器,生殖器,消化管を覆う粘膜に寄生し,宿主の組織に蓄積されると深刻な免疫反応を引き起こす。(→マイコプラズマ肺炎

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