テトラサイクリン(その他表記)tetracycline

翻訳|tetracycline

デジタル大辞泉 「テトラサイクリン」の意味・読み・例文・類語

テトラサイクリン(tetracycline)

放線菌一種培養液から分離される抗生物質。広い抗菌性をもち、リケッチア・大形ウイルス・スピロヘータ原虫類に有効。

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精選版 日本国語大辞典 「テトラサイクリン」の意味・読み・例文・類語

テトラサイクリン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] tetracycline ) 放線菌培養液から抽出した広域性抗生物質。商標名はアクロマイシン。一九五三年にアメリカのレダリー社およびファイザー社の研究所それぞれで独自に発見された。〔薬の効用(1964)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「テトラサイクリン」の意味・わかりやすい解説

テトラサイクリン
tetracycline

放線菌(Streptomyces属)培養液から得られる抗菌性抗生物質。広範囲の細菌に対して抗菌力を示す。1948年ダガーB.M.Duggerらによって発見されたオーレオマイシンaureomycinと,50年にフィンレーA.C.Finlayらによって報告されたテラマイシンterramycinとが環状構造が四つ並んだ共通の化学構造をもつことが明らかになり,共通の母核にテトラサイクリンの名が与えられた。オーレオマイシンは商品名となり,一般名はクロルテトラサイクリンとされ,テラマイシンも同様で一般名はオキシテトラサイクリンと呼ばれるようになった。クロルテトラサイクリンに代わって,その脱塩素により副作用が少なく安定性にまさるテトラサイクリンも開発されている。テトラサイクリン類はほかにも数種類得られているが,医薬品としての代表的なものは,テトラサイクリン(薬局方所収の塩酸テトラサイクリン,商品名アクロマイシンはこれの塩酸塩),オキシテトラサイクリン,クロルテトラサイクリン,ドキシサイクリン,ミノサイクリンなどで,主として塩酸塩として用いられるが,メタリン酸塩その他もある。これらは抗菌スペクトル,交差耐性などが同じため適応症は拡大されないが,作用の増強,持続性などは改良されている。

塩酸オキシテトラサイクリンは,輝黄色,無臭の結晶で水によく溶け,水溶液はかなり安定である(pH3~9で5℃に30日間保存し力価の低下を認めない)。塩酸ドキシサイクリンは,抗菌力がテトラサイクリンより強く(1~4倍),生体内持続時間が長いことを特徴として開発された。

 これらは主として経口的に用いられるが,静脈注射する場合もある。グラム陽性菌・陰性菌,リケッチア,大型ウイルスなどに強い作用をもち,ブドウ球菌,連鎖球菌,肺炎球菌淋菌,肺炎杆菌,大腸菌赤痢菌などの感染症に広く有効である。標準的使用法としては,経口投与は成人1日量1~2gを6時間ごとに分割投与する。各臓器内への移行は良好で,毒性は低い。直接作用は,細菌のリボソームに結合してタンパク質合成を阻害することである。副作用として,胃腸障害,肝臓障害,まれに光線過敏症,骨組織への沈着がある。妊婦や乳幼児には使用を避けたほうがよい。長期間投与によりカンジダが異常増殖する菌交代症も報告されている。

 テトラサイクリン類はすぐれた抗生物質で,その発見以来広く用いられ威力を発揮してきたが,耐性菌の増加などで以前ほど用いられなくなった。しかし,コレラ,腸炎ビブリオ,リケッチア,クラミディアに対しては現在でも第一選択剤となっている。
抗生物質
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百科事典マイペディア 「テトラサイクリン」の意味・わかりやすい解説

テトラサイクリン

化学式はC22H24O8N2抗生物質。商標アクロマイシン。数種の放線菌が産生,全合成も可能。黄色結晶,無臭。塩酸塩(塩酸テトラサイクリン)は黄色結晶性粉末。無臭で両者とも微生物のタンパク質合成を阻害し,広範囲な抗菌スペクトルを呈する。ブドウ球菌,肺炎球菌等のグラム陽性菌,赤痢菌,大腸菌等のグラム陰性菌,各種リケッチアクラミジアなどの感染症に内服や筋注により適用。副作用として菌交代症,胃腸障害,光線過敏症など。開発初期と異なって耐性菌が多くなり,王座をペニシリン系・セフェム系抗生物質に明け渡した。
→関連項目アクロマイシンエリスロマイシンクラミジア感染症光線過敏症鼠径リンパ肉芽腫マイコプラズマ肺炎

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栄養・生化学辞典 「テトラサイクリン」の解説

テトラサイクリン

 C22H24N2O8 (mw444.44).

 抗生物質の一つ.広範な抗菌効果を示す.

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世界大百科事典(旧版)内のテトラサイクリンの言及

【化学療法】より

…44年,結核菌を含めた広い範囲の細菌種に有効なストレプトマイシンが発見された。抗生物質antibioticsと呼ばれることになったこれら微生物由来の抗菌物質は,その後主として大きな製薬会社の手に移って開発がすすめられ,クロラムフェニコール,クロルテトラサイクリン,オキシテトラサイクリン,エリスロマイシンをはじめとして数多くの有効物質が発見されることになった。すぐれた発酵工業技術の伝統のある日本は,この分野でもアメリカとならんで世界の最先端の地位を築き,梅沢浜夫のカナマイシンをはじめとして各種の有用抗生物質を発見してきた。…

【菌交代現象】より

…普通は使用量が多く,抗菌作用域が広く,併用薬剤が多いほど起こりやすい。またテトラサイクリン内服時にも起こりやすい。次に環境因子については病院内での発生があげられる。…

【抗生物質】より

…したがって,抗生物質という言葉も物質も比較的新しいものである。40年以降,ストレプトマイシン,クロラムフェニコール,テトラサイクリンなどのすぐれた抗菌力をもつ抗生物質がつぎつぎに発見され,細菌感染症の治療は飛躍的に進歩した。その後のたゆまぬ新抗生物質の発見とその改良により,不感受性菌や耐性菌の問題もほとんど克服され,長い間恐れられてきた種々の伝染病(結核,赤痢,腸チフスなど)の重圧から人類は解放された。…

※「テトラサイクリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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