ファテープルシークリー(その他表記)Fatehpur Sīkrī

デジタル大辞泉 「ファテープルシークリー」の意味・読み・例文・類語

ファテープル‐シークリー(Fatehpur Sikri)

インド北部、ウッタルプラデシュ州の都市アグラ郊外にある都城遺跡。市街中心部より南西約40キロメートルに位置する。ムガル帝国第3代皇帝アクバルがイスラム教聖者預言に従い、王子誕生を記念してアグラから同地に遷都したが、14年後に水不足により放棄した。赤い砂岩や白大理石を用いた宮殿モスク、廟などが残る。1986年に世界遺産文化遺産)に登録された。ファテプルシークリー

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改訂新版 世界大百科事典 「ファテープルシークリー」の意味・わかりやすい解説

ファテープル・シークリー
Fatehpur Sīkrī

インド北部,ウッタル・プラデーシュ州アーグラ市の西約40kmの岩丘上にある〈勝利の市〉という意味の古城ムガル朝アクバル帝によって1569-74年に建設され,85年まで居城として用いられた。石材はほとんどが赤色砂岩で,構造は簡素であるが,細部に精緻な装飾彫刻を施している。城内には,宮殿,モスク,ミナレット,隊商宿キャラバンサライ),墓廟,城門,タンク(貯水池)などがあり,地形の関係からそれらは統一ある配置になっていない。公私の謁見場であるディーワーン・イ・アームとディーワーン・イ・ハース,5層の楼台パンチ・マハル,ジャーミ・マスジド(モスク),聖者サリーム・チスティーの墓などが特に重要である。
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世界遺産詳解 「ファテープルシークリー」の解説

ファテープルシークリー【ファテープル-シークリー】

1986年に登録された世界遺産(文化遺産)で、インド北部ウッタル・プラデシュ州のアーグラから南西約40kmに位置する、ムガル帝国第3代皇帝アクバルが16世紀後半に建造した城跡。世継ぎに恵まれなかったアクバルが、この地に住むイスラムの聖者の予言によって男児を得たため、これに感謝して、1571年に首都をアーグラから遷都した。しかし、水不足と猛暑によって、わずか十余年で立ち退きを余儀なくされ、以降は都として使用されることなく、廃墟となった。5層の楼台からなるパンチ・マハル、ディーワーニ・アーム(公謁殿)とディーワーニ・ハース(内謁殿)、最大のモスクであるジャーミ・マスジド、ジョド・バーイ殿、聖者サリーム・チシュティーの聖廟などのほか、城壁内には多くの建物が点在する。このような、イスラム建築とインドの伝統様式を融合させた建造物群が評価され、世界遺産に登録された。◇英名はFatehpur Sikri。ファテープルとは、ヒンドゥー語で「勝利の都」を意味する。

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百科事典マイペディア 「ファテープルシークリー」の意味・わかりやすい解説

ファテープル・シークリー

インド北部,ウッタル・プラデーシュ州アーグラの西約40kmの丘陵にあるムガル帝国の都跡。1574年アクバル帝によって建設され,十数年にわたって帝国の都が置かれた。周囲約11kmの都跡には宮殿,モスク,隊商宿などが完全な形で残っている。最大の建物は東西168m,南北143mの礼拝堂ジャーミ・マスジドで,ここには遷都のきっかけをつくったと伝えられる聖者サリーム・チスティーの墓がある。1986年,世界文化遺産に登録。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ファテープルシークリー」の解説

ファテープル・シークリー
Fatehpur Sīkrī

インド,アーグラーの南西にあるムガル帝国の城砦で,1571年アクバルによって建設され,一時帝国の副都とされた。赤砂岩を主材とする各種の建物からなる壮大な王城で,柱などの文様にはヒンドゥー様式がかなり取り入れられており,アクバル時代の建造物の好例である。

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世界遺産情報 「ファテープルシークリー」の解説

ファテープル・シークリー

アグラ近郊にあるファテープル・シークリーは、ムガール帝国第3代アクバル皇帝が息子の誕生を予言した聖者への感謝として築いたといういわれのある城です。14年間住んだだけで遷都してしまい、そのまま廃墟となったため400年前の建物がそのままの形で残されています。アクバル皇帝は領土の安定統治のため宗教融和策をとり、そのあらわれとしてイスラム建築とインドの伝統技術を融合させたアクバル式と呼ばれる独自の建築様式でファテープル・シークリーを築きました。

出典 KNT近畿日本ツーリスト(株)世界遺産情報について 情報

世界大百科事典(旧版)内のファテープルシークリーの言及

【巡礼】より

ワーラーナシーの守護神シバをまつったビシュバナート寺院の西隣にイスラム教徒が礼拝に通うアウラングゼーブ・マスジド(モスク)があり,そのあたりを銃剣を持った警官が衝突防止の巡視をしている姿がしばしばみられる。しかし,たとえばアーグラ郊外の旧都ファテープル・シークリーのジャマー・マスジドにあるイスラム聖者の墓には,その聖者の祝福によりムガル朝のアクバル帝に子が授かったという故事にあやかろうと,宗教・宗派を問わず子宝を願う女性がおおぜい参拝にきているし,ビハール州のナーランダー仏教大学跡の北に立つ密教の摩利支天像を,ヒンドゥー教徒たちが平伏して拝んでいる。これらの事実が示唆するのは,聖地巡礼という行為が,大衆動員の旗印として歪曲利用されて対立抗争の要因の一つともなりうるが,根源的には宗教・宗派以前の原初的な信仰と神や聖者の祝福を得ようとする素朴な願いとに発しているということであろう。…

※「ファテープルシークリー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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