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フェムトセル ふぇむとせる

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知恵蔵2015の解説

フェムトセル

携帯電話向けの超小型基地局システム携帯電話の場合、一つの基地局でカバーできる通信範囲は、通常、通信可能なエリアが、半径数百メートルから数キロメートルの円を構成している。これを地形や建物の状況を勘案し、それぞれが重なりあうように配置していくことで、面的な「通信可能エリア」を構築する、というのが、携帯電話の基本的な考え方となっている。生物が細胞(セル)の組み合わせでできあがっている様から、携帯電話の基地局を「セル」と呼ぶ。
携帯電話の基地局は、1局で対応できる「通信端末数」に限界がある。駅前やスポーツスタジアムなどの、人がたくさん集まる場所では、基地局の数が人の数に対して不足しがちになる。そこで、一つの基地局がカバーする範囲を、あえて半径数十メートルに制限し、一つの「セル」を小さくすることで、特定エリア内の「同時通話可能数」を増やす、という施策が採られている。
また、PHSの場合には、元々、電話端末および基地局のコストを下げ、通信速度を維持する目的から、大半の基地局の通信可能範囲を、数十メートルから数百メートルに制限し、小さな「セル」の集まりで通話可能エリアを構築している。
このように、通信可能範囲が数十メートルから数百メートルのセルのことを、小さなセル、という意味合いを込めて「マイクロセル」と呼ぶ。それに対し、半径数キロまでの大型のものを「マクロセル」と呼ぶ。フェムトセルは、マイクロセルよりもさらに小さい基地局のこと。語源は、「千兆分の一」を示す「フェムト」。
実際には、現在の携帯電話システムでも、ビルの1フロアをカバーする小型の基地局として、「ナノセル」「ピコセル」といった呼称のものが使われている場合が多い。だがフェムトセルはさらに小さく、半径十数メートルと、無線LAN程度の範囲をカバーする。
他のセルとの最も大きな違いは、事業者がセルを設置するのではなく、「契約者が自宅などに、自分で設置する」という点だ。携帯電話事業者に対しては、「自宅内の特定の部屋で電話がつながらない」といったクレームが寄せられる。だが、こういった「ごく狭い特定のエリア」をカバーするために事業者自身が設備を設置するのは、コスト効率の面で大きな問題がある。そこで、家庭にフェムトセル端末を提供、自前で「宅内の不感地帯」をカバーしてもらう形を採れば、よりコストを下げ顧客満足度を高められる、と考えたわけだ。
このような考え方は、従来も「ホームアンテナ」などの呼称で提供されてきた。ただしホームアンテナの場合には、「他の基地局の通信を中継する」機器であり、基地局ではなかった。また、一般的な基地局は携帯電話事業者が持つ「専用回線」につながるが、フェムトセルの場合には、各家庭に専用回線が引けないこともあり、一般的な「ブロードバンド回線」につなぐ。このことは、携帯電話事業者にとって、自社の回線利用率を下げ、回線利用料の上昇を抑える、という目的も持っている。
日本では、NTTドコモとソフトバンクモバイルが導入を前向きに検討している。だがKDDIは、導入に消極的な立場を採っている。従来の基地局電波との干渉により、むしろ通信を阻害する可能性も否定できないこと、家庭の回線を使うため、通話品質などが落ちる恐れがあり、それが顧客からのクレームにつながる懸念もあることなどが、その理由だ。
電波の利用形態が変わること、従来の電波法では、「携帯電話基地局は専用回線で運用されるもの」と規定されていることなどから、実際の導入には、法的な規制緩和が必要。本来は、2008年10月をめどに制度面での整備が行われ、08年中にもフェムトセルの導入が行われる、との予定であったが、種々の事情により、延期され、08年12月時点では、まだサービスは行われていない。

(西田宗千佳 フリージャーナリスト / 2008年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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デジタル大辞泉の解説

フェムトセル(femtocell)

移動体通信機器の、極めて狭い領域の通信エリア。住宅や小規模オフィスなどの屋内に小型基地局を設置し、通信の質の向上をはかるもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フェムトセル
ふぇむとせる
femtocell

携帯電話などの移動体通信システムにおける、超小型の基地局および基地局がカバーするきわめて狭い通信エリア。基地局とは、移動端末と通信するために地上に設置される移動しない無線局のことで、交信できる範囲が通信エリアになる。携帯電話システムでは、それぞれの基地局がカバーする通信エリアを「細胞」を意味するセル(cell)とよび、複数のセルを組み合わせることで通信圏を構成する。一般的な基地局は、半径数百メートルから数十キロメートル程度の範囲をカバーし、その範囲の大きさにより、マクロセル、マイクロセル、ナノセル、ピコセルなどとよんでいる。フェムトセルは、セルの半径が数メートルから数十メートルのものをさす。フェムトとは、国際単位系(SI)で定められている単位を表す接頭語で、本来は10のマイナス15乗(1000兆分の1)を表しているが、この場合は「微小」や「極小」という意味で使われている。
 広範囲をカバーする屋外の基地局にはアンテナや鉄塔、交換機などの装置が必要であるため、設置場所が限定される。また、ビルの谷間や高層階、屋内、地下など、電波が微弱になるエリアや、届かないエリアができるケースもある。フェムトセルは、それを補完するために住宅やオフィス、店舗といった屋内施設に設置されることが多い。この場合、バックボーン(基幹回線)となる有線部分は光ファイバーやケーブルテレビなどの一般的なブロードバンド回線を利用するため、新たな設備投資や維持費などのコスト削減にもつながる。2013年(平成25)4月時点で、NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、KDDI(au)の各キャリアで、フェムトセルによるサービスを提供している。[編集部]

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