フェリ磁性(読み)フェリジセイ

化学辞典 第2版 「フェリ磁性」の解説

フェリ磁性
フェリジセイ
ferrimagnetism

結晶中に2種類の磁気的原子あるいはイオンがあって,それらの間に反強磁性的な交換相互作用がはたらいていて,磁気モーメント互いに正および負の反対向きになっている.それぞれの向きを向く原子の総数が互いに異なっているか,あるいはそれぞれの原子のもつ磁気モーメントが異なっているために,結晶全体としては磁気モーメントは完全に打ち消されずに有限な自発磁化が残る.このようなものをフェリ磁性といい,L. Néel(1948年)によって理論的に解明された.自発磁化が存在する点では強磁性に似ているが,自発磁化の温度変化は強磁性よりは複雑であり,また,キュリー温度以上の磁化率キュリーの法則に従わない.Fe3O4をはじめとするフェライトイットリウム鉄ガーネット(YIG)などが代表的なフェリ磁性体である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「フェリ磁性」の意味・わかりやすい解説

フェリ磁性【フェリじせい】

磁鉄鉱やフェライトなど酸化物硫化物の強磁性体は,金属元素合金の強磁性体と異なる機構により強磁性を示す。これをフェリ磁性という。結晶中の2種類の磁性原子(イオン)が2群に分かれ,それらの磁気モーメントは互いに逆方向を向いて打ち消し合うが,両者の大きさが異なるため全体として消えずに残り,それが強磁性として現れる。ネール命名。→反強磁性
→関連項目磁性体

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェリ磁性」の意味・わかりやすい解説

フェリ磁性
フェリじせい
ferrimagnetism

磁性体のなかに2種類の磁性原子があり,それらの磁気モーメントが逆向きで,大きさが等しくないときに現れる磁性。大きさが等しくて,互いが完全に打消し合うときには反強磁性となる。したがって反強磁性と異なり,フェリ磁性は強い磁性を発生させることが可能となる。フェリ磁性体にはフェライト,鉄ガーネット,クロマイトなどがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「フェリ磁性」の意味・わかりやすい解説

フェリ磁性 (フェリじせい)

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世界大百科事典(旧版)内のフェリ磁性の言及

【磁性】より

…反磁性体,常磁性体では磁場によって磁化が誘起されるのに対し,強磁性体は磁場がなくても磁化をもっており,この磁化を自発磁化と呼ぶ(ただし強磁性体でも磁区の構造によっては見かけ上磁化をもたない場合がある)。このほか,強磁性と似た成立ちであるが,巨視的には自発磁化をもたず,常磁性に似た性質を示す反強磁性と呼ばれるものがあり,さらに成立ちは反強磁性に似ているが,巨視的には自発磁化をもつフェリ磁性と呼ばれるものもある(それぞれの物質を反強磁性体,フェリ磁性体という)。 磁性の起源となるのは原子を構成する電子および原子核の磁気モーメントである。…

※「フェリ磁性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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