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フミン酸

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フミン酸
ふみんさん
humic acid

石炭化度の低い泥炭や褐炭に含まれる、アルカリに溶けて、酸で沈殿する有機高分子化合物をいう。外見は褐色から黒色を呈する。土壌中に存在するものを土壌フミン酸という。
 フミン酸やフルボ酸fulvic acidは一般に森の広葉樹の落葉が微生物の働きによって腐植化してできる有機酸であり、腐植物質Humic substanceとよばれる。フミン酸は酸(水素イオン指数pH<1)に不溶、アルカリ(高pH)に可溶で分子量は3000~数十万程度である。土壌、堆積物などに多く含まれており、色が濃いのが特徴で、有機炭素成分の大部分を占める。フルボ酸は酸、アルカリに可溶で分子量は300~3000程度である。pHに関係なくすべての溶液によく解けるのが特徴であり、河川に溶けている有機物の4割を占める。
 カルボキシ基(カルボキシル基)-COOHやカルボニル基-CO、ヒドロキシ基-OHなどを多く含むため、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリに可溶となり、一種の高分子電解質とみなされる。複雑な混合物であり、含有されている試料によって元素組成、官能基数などが異なる。石炭を空気などで酸化すると、やはりアルカリ可溶・酸不溶のものが得られるが、これは再生フミン酸とよばれる。水可溶の低分子酸に至る中間生成物である。また硝酸で酸化しても同様のものが得られるが、ニトロ基を含有しており、ニトロフミン酸とよばれる。いずれも分子量は1000~10万程度とされ、測定法によっても一定しない。ニトロフミン酸は工業生産されたことがあり、ボーリング泥水の調整剤、土壌改良剤、肥効増進剤、窯業原料やセメント製造原料の調整剤、コンクリート施工上の調整剤などとしても用いられる。
 自然界にあっては天然の腐植物質が存在し、フルボ酸と土壌中の鉄が結合してフルボ酸鉄となって海まで到達していたものが、高度経済成長に伴う林業政策や大型の開発事業によって、フルボ酸ができにくい杉や赤松などが植林されたり、森の腐葉土層が削られたりしたために、フルボ酸が生成されにくい環境になってきた。これが原因の一つとなって鉄の供給力が弱くなり、沿岸地域に「磯焼け」とよばれる一種の海の砂漠化現象が引き起こされている。磯焼けした沿岸地域は海産物も不毛化するため、人工的な腐植物質とさまざまな鉄源を組み合わせて沿岸地域に鉄を供給するシステム開発が進められており、フルボ酸やフミン酸に磯焼け修復の役割が期待されている。[荒牧寿弘]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

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