翻訳|frock coat
1920年代の半ばごろまで用いられた昼間の男性用礼服。膝丈でダブルの打合せ,腰から下がひろがり後ろ中央にベンツ,衿には拝絹をかぶせた。黒白ストライプのズボンを用いた。フロックとは元来聖職者の着るゆったりした衣服をいい,後には農民の着るスモックも意味し,16~17世紀には女性のガウンをも呼んだ。フロックコートは,18世紀に着用されたルダンゴトredingote(英名ライディングコート)の発展したものと考えられ,当初は乗馬服であった。フランス革命後の1790年代には長ズボンと組み合わせて着用された。19世紀前半に市民服として流行したが,やがて日常着にモーニングコートが用いられるようになると,フロックコートは礼服となり,その後すたれた。日本へは片山淳之助(福沢諭吉)の《西洋衣食住》(1867)に〈割羽織--ゼンツルマンコート〉として紹介された。1872年(明治5)の官員服制以降普及した洋服は,ほとんどフロックコート型であり,軍服にも採用された。
執筆者:星野 醍醐郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
19世紀に、男子が昼間の平常着として着用したコート。打合せはシングルまたはダブルでウエストラインに切り替えがあり、スカート部が膝(ひざ)の近くまでの長さで円筒状に保たれている点が、当時着られた他のコート、つまりテールコートやモーニングコートと異なっている。生地(きじ)は、黒または暗灰色のチェビオット・ウールやウーステッドを用い、灰色、黒の縞(しま)または格子柄(がら)のズボンを組み合わせ、対比的な色や材質のチョッキが着られた。1850年代の終わりに男子の日常着として、後のスーツ(三つ揃(ぞろ)い)の原型となったサックコートsack coatが現れ、しばらく共存していたが、19世紀の末に向かって廃れていった。なお一部に正装として残された。
[菅生ふさ代]
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