フーリエ(François Marie Charles Fourier)(読み)ふーりえ(英語表記)François Marie Charles Fourier

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

フーリエ(François Marie Charles Fourier)
ふーりえ
François Marie Charles Fourier
(1772―1837)

フランスの空想的社会主義者。裕福なラシャ商人の息子としてブザンソンに生まれる。7歳のとき商業が人を欺く術(すべ)であることを知り、商業への憎悪を固めた。しかし破産したため20歳でリヨンの商店の外交員となった。1798年パリリンゴの価格がルーアン地方に比べ異常に高いことを知り、「産業機構の根本的混乱」に気づく。4年にわたる研究で彼独自の理論を築く。以後彼は、几帳面(きちょうめん)な使用人であると同時に人類の救済者たることを確信した誇大妄想家となる。1800年以後非公認仲買人などをしながら、最初の著作『四運動の理論』(1808)や主著『家庭的農業的協同社会論』2巻(1822)を刊行エンゲルスは、彼を評して、「現存の社会関係を非常に鋭く、機知諧謔(かいぎゃく)をもって批判した」(「フーリエの商業論の一断片」)と書いた。フーリエは、所有の細分化と商業的寄生とに近代の「産業的無政府性」の原因を帰した。彼は「商業の略奪行為」を告発する。それは、計画破産、買占め、投機、商人の過剰存在のことである。近代社会にあっては、細分と浪費とにより「協同社会」の4分の1の生産力しかなく、しかも貧困が豊富そのものから生まれる。フーリエは、細分化した近代産業では「いっさいが悪循環である」とみなす。このような体制は力によってしか維持されない。国家がその主要な手段で、道徳がそれに介入し情念を「閉塞(へいそく)」する。

 フーリエは神が欲した自然秩序を追求する。精神界のそれは情念引力とよばれる。「文明」を「産業的封建制」にした競争的闘争の制度を、情念引力に基づく協同社会に変えること、これが彼の目的であった。1825年ころ財政難に陥った彼はパリを去って再度リヨンで店員となる。このころコンシデラン、ペラランCharles Pellarin(1804―1883)などの弟子が集まってきたが、彼に必要なのはファランステールと称せられる理想社会の設立基金を提供する金持ちであった。

[古賀英三郎 2015年6月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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