リヨン(英語表記)Lyon

デジタル大辞泉 「リヨン」の意味・読み・例文・類語

リヨン(Lyon)

フランス中東部、オーベルニュ‐ローヌ‐アルプ地方の地方政府所在地。商工業都市。ローヌ川と支流ソーヌ川との合流点にあり、交通の要地。前43年ローマ植民市として建設。伝統的な絹織物業に加え、機械・金属・電子工業金融業が発達。人口、行政区48万(2008)。

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精選版 日本国語大辞典 「リヨン」の意味・読み・例文・類語

リヨン

  1. ( Lyon ) フランス南東部、ローヌ川とソーヌ川の合流点にある商工業都市。古代ローマのコロニアに始まる古い都市で、一五世紀以来、絹織物工業で発展。

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改訂新版 世界大百科事典 「リヨン」の意味・わかりやすい解説

リヨン
Lyon

フランス南東部,ローヌ県の県都で,ローヌ・アルプス地域の中心都市。パリの南東460km,マルセイユの北314kmの地点にあり,ローヌ川とソーヌ川の合流点に位置する。人口44万5452(1999),都市圏人口約126万。市域の人口数ではパリ,マルセイユに次いでフランス第3の都市。リヨン市を中心として都市人口の多い約60のコミューンが広がり,これらが連続してリヨン都市圏を形成している。都市圏の人口数は,パリ都市圏に次いでフランス第2の規模を有している。リヨンの人口は,1801年にすでに10万に達し,19世紀には人口の急速な増加をみて,第1次大戦前にすでに50万に達しようとしていた。第2次大戦後になると,人口増加は郊外部において顕著となり,リヨン都市圏内の郊外部では1914年以前には人口15万であったものが,54年には30万,現在では70万を超えている。郊外化の進展の著しい地区は,とくに東郊であり,たとえばビルールバンヌVilleurbanneやベニシューVénissieuxなどの主要な衛星都市が成長している。また,78年に開通した地下鉄によって郊外化をさらに促進させている。

リヨンは古くからローヌ川とソーヌ川が形づくる回廊地帯の中心部を占めて,地理的に恵まれた位置に成長してきた。首都のパリ地方と地中海沿岸を結ぶ南北軸の中間地点にあるばかりではなく,東西の軸であるアルプスとマシフ・サントラル(中央山地)の中間地点にも位置している。国内の交通の要衝であるばかりでなく,ドイツ,イタリア,スイスそして大西洋岸に通じる位置にもある。ローヌ川,ソーヌ川の合流点の西側にはフルビエールの丘がそびえ,都市を建設し防衛するにふさわしい地形も有していた。ローヌ川とソーヌ川に沿った河谷は鉄道敷設を容易にし,数多くの鉄道が集中して鉄道網の要地になった。両河川による河川交通は,古くからエドゥアール・エリオ港を中心になされ,現代ではパリと地中海地方を結ぶ高速道路が走る。それに加えてパイプライン網の要衝でもある。フランス最初の高速鉄道(TGV)もまずパリ~リヨン間が開通し,これがマルセイユまで南下することによって,主要都市と短時間で結びつくようになった。さらに,航空機時代を迎えてブロン空港に加えてサトラス国際空港が開設された。

 リヨンの産業活動を支えてきた伝統的な絹織物工業や繊維工業は,大きな変化を強いられている。かつての絹織物業の大半は,合成繊維・人工繊維の紡糸・織物業へ転換し,さらには既製服などの縫製業も増加した。工場も大規模なものが増加してきている。近代工業は主として都市の周辺部に立地し,とくに化学工業,自動車工業そして電子工業などの組立工業が主体である。しかしリヨンには,鉄鋼業を除いてエネルギー生産(主として水力発電)から食品工業まで,ありとあらゆる工業業種が存在する。化学工業の中には伝統的な繊維工業に関連して仕上げや染色に結びついて誕生した業種もある。一方,南郊フェイザンFeyzinの近代的な石油精製業はリヨンを一躍石油化学工業の一大中心地にし,ローヌ川に沿って石油化学工業の工場群が建ち並ぶ様相を目にすることができる。第3次産業部門も,当然,大都市であるためきわめて多様化し,高度化している。たとえば教育,行政,商業,金融(銀行と証券)の諸機能が充実し,軍事機能でも地域的な中心地で,司法控訴院,司教座もある。

都市の起源は,フルビエールの丘にローマの植民都市ルグドゥヌムLugdunumが建設されたことに始まる。アウグストゥスの時代にガリア地方の中心都市となって急成長し,461年ブルグント王国の最初の首都になった。15世紀以降,アルプス山中の谷を経由して北イタリアとの貿易が盛んになり,まず商業が発達し,ついで絹織物工業が発展した。商業都市として成長してきたリヨンでは,1420年には定期市が創設され,商業都市としての地歩を固めた。絹織物工業が導入されたのが1466年であり,73年には印刷技術がもたらされ,フランスの中では最初にフランス語の本がリヨンで出版されてフランス・ルネサンス文化の一大中心地となった。国王の保護下に成長した絹織物工業は,イタリアから伝えられた技術を基礎にし,周囲の農村部での養蚕や農業労働力と結びつきながら,印刷業とともに特殊産業として発展した。そのため,〈絹商人〉と呼ばれた活発な企業家たちが富を築いた。19世紀初めに絹織物工業は,ジャカード織機の発明によって最盛期を迎えた。しかし,工業の発達とともに社会的な対立が顕著になり,1831年に起きた労働者の反乱は政府の武力弾圧によって鎮定されたが,34年に再び反乱が起こり,同市の労働運動はフランスの先端を切った。また諸産業の発達と交易の中心地であることは金融資本を育て,金融業者の集中を促し,63年には預金銀行クレディ・リヨネが創設された。この銀行は1945年に国有化され,フランス第2の規模を誇っている。絹織物工業が衰退したのち,近代工業への橋渡しを行ったのは,地域的な資源を活用した工業であった。たとえば,サン・ベルとその周辺の黄鉄鉱と銅鉱の採掘,サンテティエンヌの石炭業,アルプス・ローヌ地方の水力発電などである。

都市圏人口がフランス第2の都市に成長したリヨンでは,近代的な都市生活にしだいに適応しなくなった市街地の再開発と,郊外において増加する人口を受け入れるニュータウンの建設が進められている。市の中心部より東へ33kmの位置にはリル・ダボーのニュータウン建設が進み,サトラス国際空港が両者の中間に開港した。市街地の再開発は,まずリヨンのペラーシュ駅を中心とする地区に始まった。さらに大規模な都市再開発事業は,ローヌ川左岸のラ・ギロティエールとレ・ブロトー両街区にわたるラ・パール・ディユー地区で進められている。この地区は中世起源の労働者居住地域で,土地割りは細かく道路は曲がりくねり,人口密度が高く各種の業種が混在していた。この約30haの地域に,国の行政機関が入った新しいビル街をはじめ,多くの百貨店や専門店からなる中心商業地区,銀行・ホテルを主体とした高層ビル群が並び,新しい高速鉄道の駅も開設されようとしている。フランス政府は,大都市に集中する第3次産業を地方の地域発展のために〈均衡メトロポールmétropole d'équilibre〉に分散させる政策をとってきた。リヨンは国内八つの均衡メトロポールの一つである。パール・ディユー地区の都市再開発事業は,フランスの地方都市において最大規模のものである。第3次産業を中軸として高度な機能を創造することにより,リヨンを従来の広域中心都市から副首都の機能をもつ都市へ指向させようとしている。
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フルビエールの丘の上には,1871-94年にロマネスクやビザンティンの折衷様式で建造されたノートル・ダム・ド・フルビエール教会がそびえ,近接してガロ・ロマン博物館やローマ時代の大劇場,オデウム(奏楽堂)の遺跡がある。丘の麓のサン・ジャン大聖堂(12~15世紀)は,内陣の高さ24.5mに対し,遅れて建造された身廊は32.5mと一段と高い。大聖堂の守護聖人,バプテスマのヨハネ伝を表すステンド・グラス,浮彫(西玄関下方)が知られる。付近には,14~17世紀の建造物が残る〈古きリヨン〉の町並みがある。ローヌとソーヌ両河川にはさまれた半島状の地区には,サン・マルタン・デネー旧修道院教会とサン・ニジエ教会が建つ。前者は改築部分が多いが,12世紀初めのモザイク,聖書の場面や動物文の彫刻のある柱頭が残る。後者は当市最古の創建といわれるが,現在の建築(14~15世紀)はフランボアイヤン様式のファサードにルネサンス式玄関を備える。市立美術館は旧ベネディクト会修道院を占め,歴史博物館とマリオネット博物館は16世紀の邸館に入っている。織物歴史博物館のビザンティン,イスラムなどの織物,17世紀以降のリヨンの絹織物をはじめ30室に及ぶコレクションは世界有数である。
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百科事典マイペディア 「リヨン」の意味・わかりやすい解説

リヨン

フランス南東部,ローヌ県の県都。パリの南東470km,ソーヌ川,ローヌ川の合流点にある都市。パリ,マルセイユに次ぐ大都市。国際見本市の開催地で,機械・金属・化学・電機工業が行われる。大学(1810年創立),控訴院,12世紀のゴシック聖堂,15世紀の大司教館などがある。前43年ローマ植民地。1312年フランス王領。15世紀以来絹織物業によって栄え,商業・印刷・金融の一大中心地になった。フランス革命当時は共和政反対の中心地。第2次大戦中は自由フランス軍の拠点。歴史地区は1998年世界文化遺産に登録。47万2305人(2006)。都市圏人口141万7463人(2006)。
→関連項目ソーヌ[川]フランス

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「リヨン」の解説

リヨン
Lyon

フランスのローヌ,ソーヌ両川合流点にある都市。前43年ローマ植民市ブルグント,ついでフランクに属し,ヴェルダン条約西フランク王国から離れ,1032年神聖ローマ帝国に帰属した。以後,町はだいたい大司教支配に属したが,12世紀末コミューン,1312年王領に併合された。フランソワ1世以来絹織物業の中心として名高い。

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世界遺産情報 「リヨン」の解説

リヨン

リヨンはパリに次ぐ大都市で「美食の都」として有名なほか、「絹の街」「金融の街」「ハイテクの街」などさまざまな称号があります。川を境にして三様の異なった顔をのぞかせ、ソーヌ川の西側がローマ時代からルネッサンス時代の建物が今に息づく旧市街。東側のベルクール広場を中心とした界隈はリヨン一の繁華街。さらにローヌ川の東側はビジネス街として栄えています。14世紀につくられた天文時計が名高いサン・ジャン大司教教会やローマ遺跡の劇場など歴史を感じさせる見どころが多く、世界遺産に登録されています。

出典 KNT近畿日本ツーリスト(株)世界遺産情報について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「リヨン」の解説

リヨン
Lyon

フランス中東部,ローヌ川とソーヌ川との合流点にある商工業都市
交通の要地としてローマ時代から開拓され,司教座も設けられたが,16世紀以後は絹織物工業で繁栄し,産業革命時代にはフランスの代表的な都市となった。第二次世界大戦中はレジスタンス運動が盛んであった。

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世界大百科事典(旧版)内のリヨンの言及

【絹織物】より

… フランスの絹織業は13世紀以降パリ,ルーアン,とくに教皇の町アビニョンなどで営まれたが,中世における絹製品はおもに小間物であった。後に〈絹の都〉とよばれるにいたったリヨンでの絹織物工業の発祥は,1466年のルイ11世によるイタリア人絹職人の同市への招致にあったが,本格的な発展の開始は1536年にフランソア1世によって原料絹,絹織物の専売権が付与されたときからである。17世紀初頭における新型の空引機(そらひきばた)=高機(イタリア人のダンゴンの発明)の獲得を機に,J.B.コルベールによる手厚い保護も加わって,リヨン機業の目覚ましい繁栄が始まった。…

※「リヨン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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