精選版 日本国語大辞典 「フーリエ」の意味・読み・例文・類語
フーリエ
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フランスの哲学者,社会・経済思想家。ブザンソン生れ。富裕な商家の出であったが,1793年に破産して以来,行商人,店員などをしながら著述活動に入る。1808年に最初の大著《四運動および一般運命の理論》を世に問い,尖鋭な社会・経済批判,壮大かつ奇抜な宇宙・社会進化論,斬新・精密な推察にもとづくユートピア的世界の構想等々を展開するが,黙殺される。しかし,〈ファランステールphalanstère〉と称する共同体住居の設置による新社会構築の計画をあきらめることなく,22年には最大の著作《家庭・農業組合概論》を,29年には《産業・組合新世界》を発表し,篤志ある資産家たちへの空しい呼びかけを繰り返す。晩年にはP.V.コンシデランら弟子を自称する人々があらわれ,〈フーリエ主義Fouriérisme〉運動が創始されるが,フーリエ自身は彼らにも自説が十分に理解されていないことを自覚しつつ,不遇のままパリで没した。以後この運動は欧米各地で断続的に試みられ,ある程度の成果をあげる。ネルバルやボードレールら文学者たちへの影響も無視しがたい。
社会主義,共産主義を予告する側面をもつフーリエの思想は,マルクスによって高く評価されたが,エンゲルスはこれをサン・シモンやR.オーエンと並ぶ〈空想的社会主義〉の一例とみなし,この位置づけが20世紀半ばまで通説となっていた。しかし,シュルレアリスムの指導者A.ブルトンによる再評価を経て,いわゆる〈五月革命〉(1968)後の全集の復刊,とくに弟子たちによって危険視され隠匿されていた大著《愛の新世界》の初版刊行(1967)を機に,フーリエの思想はようやくその全貌を明らかにしはじめた。〈アナロジー〉および〈情念引力〉の理論にもとづくその精緻きわまる宇宙論・歴史観,また労働を快楽に変える革命的な構想,そしてなによりも,比較を絶するそのユートピア的な言語体系の全体は,いわゆる社会主義思想史や経済学説史の範囲を超えて,現代思想の各分野に新たな影響を及ぼしつつある。したがって多くの点でけたはずれであったこの予言的思想の持主の位置づけは,まだ緒についたばかりというべきであろう。日本でもすでに初期アナーキズム(大杉栄ら)への若干の影響が見られたが,萌芽の状態にとどまった。
執筆者:巖谷 國士
フランスの数学者。中部フランスのオーセールに生まれ,幼くして孤児となり,陸軍の学校に学ぶ。1795年新設されたエコール・ポリテクニクで教え,98年G.モンジュとともにナポレオンのエジプト遠征に従軍する。1801年彼の行政的才能を認めたナポレオンからイゼール県知事に任命され,08年男爵を授けられるが,そのころから熱伝導論の研究を始めた。ナポレオン失脚後一時失職するが,17年アカデミー・デ・シアンス会員に選ばれ,22年同院常任幹事となる。27年にはアカデミー・フランセーズ会員となる。革命期のフランスに起伏の多い生涯を送ったが,晩年は学問の研究に専念することができた。熱伝導論の研究に関連してフーリエ級数やフーリエ積分を発見し,それがのちに解析学のまったく新しい分野に発展した。彼は物理的な考察からこの発見が導かれたので“自然の深い研究こそ数学上の発見のもっとも豊かな源泉である”ことを信条としていた。
執筆者:弥永 昌吉
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1772~1837
フランスの空想的社会主義者。商業や株式取引に関する職業に従事したため,その体験にもとづいた資本主義批判を詳細に展開し,ファランジュと呼ぶ協同組合的ユートピアを構想し実現しようとした。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…女性の状態を歴史的時間のなかで検証しようとする発想は,19世紀の産物であった。フランスの空想的社会主義者フーリエは《四運動の理論》(1808)で,社会の進歩と女性の解放は比例するといい,イギリスの功利主義者ジョン・スチュアート・ミルは《女性の隷従》(1869)で,奴隷制から自由な社会へという人類史の延長線上に女性解放をおこうとした。《恋愛と結婚》(1903)を書いたスウェーデンのE.ケイは,歴史は恋愛と結婚の自由に向かって進んできたとする立場から女性解放の方向性を示した。…
… 第3は,党派的なユートピアであるが,かつて宗教的運動の中で主張されたような孤絶したユートピア構想とは異なった,新しい開放性をもっている。党派のユートピアは,理論上の要請であるとともに行動のプランでもあるが,19世紀については,とりわけイギリスのR.オーエンとフランスのサン・シモン,C.フーリエらの初期社会主義運動が注目される。オーエンは,協同組合を主体とする共産的村落を構想し,1825年からアメリカに〈ニューハーモニーNew Harmony〉を建設して,この理想を現実に移そうと試みた。…
…続いてG.F.B.リーマンは,積分の定義を反省してそれを一般にした論文を発表し(1854),さらにG.カントルは無理数論ならびに集合論を創始した(1872)。 これよりさき,J.B.J.フーリエは熱伝導に関する有名な論文(1812)を書き,すべての関数はいわゆるフーリエ級数で表されることを論じたが,これが解析学に及ぼした影響は大きい。すなわち,ディリクレが関数の現代的な定義を確立したのは彼のフーリエ級数に関する二つの論文(1829,37)においてであり,また,アーベルの一様収束概念の発見,リーマンによる積分の一般的な定義,カントルの無理数論,集合論の創始も,フーリエ級数が一つの誘因であったと思われる。…
… 解析学方面では,上述のような基礎概念の確立もこの時代の特徴的な成果であるが,18世紀以来の古典解析の進展もある。J.B.J.フーリエは熱伝導の理論に関連し,フーリエ級数を導入したが,どのような関数がその級数で表現されるかの問題は,関数概念についての深刻な反省を促した。これは応用数学上の問題から純粋数学の本質的な発展がもたらされた好例として挙げられる。…
※「フーリエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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