ヘイトスピーチ対策法(読み)ヘイトスピーチタイサクホウ

デジタル大辞泉の解説

ヘイトスピーチたいさく‐ほう〔‐ハフ〕【ヘイトスピーチ対策法】

《「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」の通称》日本に居住している外国出身者やその子孫に対する差別意識を助長・誘発し、地域社会から排除することを扇動するような言動の解消に取り組むことを定めた法律。平成28年(2016)6月施行。ヘイトスピーチ解消法ヘイトスピーチ規制法。→ヘイトスピーチ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

知恵蔵の解説

ヘイトスピーチ対策法

「特定の人種や民族への差別」をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)の抑止・解消を目的とした法律。2016年6月に施行された。正式名称は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」。
本法では、ヘイトスピーチを本邦外(日本国外)出身者への「差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知」する行為、「本邦外出身者を地域社会から排除することを動する不当な差別的言動」と定義し、基本理念として「(国民は)不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない」と掲げている。基本的施策としては、国に対して、相談体制の整備、人権教育の充実、啓発活動の実施などを定めている。また地方公共団体に対しては、国との役割分担を踏まえながら、実情に応じた施策を実施することを定めている。ただし、禁止・罰則規定がないことから、実効性に疑問の声が出ている。また、どこまでの言動を「不当」とするか線引きが難しく、公権力による恣意(しい)的な解釈・運用を危惧する声もある。
ヘイトスピーチは00年代末頃から、とりわけ在日コリアンの排斥を訴える右派系市民団体のデモ・街宣活動で頻繁に行われるようになり、深刻な社会問題になっていた。日本は、差別扇動行為の禁止を求める国連人種差別撤退(撤廃)条約を採択しており、人権擁護の啓発活動は行ってきたものの、憲法が保障する「表現の自由」を侵害する恐れがあることから、法律による規制には賛否両論があった。法規制の議論が高まるなか実施されたアンケート(「毎日新聞」15年5月実施、対象2310人)でも、法規制賛成46.9%、反対49.1%と伯仲していた。

(大迫秀樹 フリー編集者/2016年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

ヘイトスピーチ対策法

2016年5月に参院本会議で可決、成立し、6月に施行された。罰則を定めず「不当な差別的言動は許されない」と規定し、国や自治体に解消のための施策を講じるよう定めたが、対象を「適法に居住する」「本邦外出身者」やその子孫としたことで、不法入国者の子孫や日本国籍を持つマイノリティーが対象外になるなどの課題も指摘された。

(2018-04-13 朝日新聞 朝刊 東京B・2地方)

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