ベグラーム(英語表記)Begrām

改訂新版 世界大百科事典 「ベグラーム」の意味・わかりやすい解説

ベグラーム
Begrām

アフガニスタンのカーブル北方約60km,ヒンドゥークシュ南麓を東流するパンジュシール川南岸のレキ岩台地端にあるクシャーナ朝から9世紀までの都城跡。カーブル川流域を版図にもった古代カーピシー国の中心地で,歴代支配者はここを夏都,ガンダーラを冬都とした。カーピシー・ベグラームともいう。アレクサンドリア・アド・カウカスムにも同定される。都城跡は,レキ岩段丘の上から下にかけて南北に長く,南の段丘上には東西450m,南北150mの市壁が残り,段丘下方にアブドゥッラー・イ・ボルジとよばれる市の北端が残る。A.フーシェはこれらを新旧の都城跡とみたが,元来はひとつの都市を形成していた。1937年から45年にかけてフランス考古使節団が数回にわたって発掘したのは,段丘上の一部で,市壁は石積みの上に泥煉瓦で築き,中央に一門をひらき,そこから大路が北へ曲折して走る。その東側の第10,13室と命名された,密閉された2室中からは,いわゆるベグラーム遺宝出土した。それは,インド象牙細工(函,椅子の背もたれ),シリアの青銅製品(彫像灯台など),ローマガラス(彩絵した杯形器,魚形器など),アレクサンドリアの石膏製品(浮彫人物像のある円板),中国漢代の漆器(洗など)から成る。R.ギルシュマンはついで大路の西側と東側を発掘して,Ⅰ期(インド・ギリシア人時代),Ⅱ期(クシャーナ時代),Ⅲ期(キダーラ・クシャーナ時代。5世紀以前)の3回の都市遺構を層位上確認し,財宝がⅡ期のクシャーナ時代に当たるものであることを認めた。ベグラーム発掘報告とともに発表されたギルシュマンのクシャーナ史に対する見解によって,第2次大戦後の中央アジア史研究は活況を復したが,144年に即位したとするカニシカ王年代はその後否定される方向にあり,またベグラーム自身がエフタルにより壊滅し,6世紀には廃絶したとする見解も否定されている。
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百科事典マイペディア 「ベグラーム」の意味・わかりやすい解説

ベグラーム

アフガニスタン,カブールの北東60kmのゴルバンド川とパンジュシール川の合流点にある古代カーピシー国の中心地であり,クシャーナ朝から9世紀までの都城跡。1937年―1945年フランスの考古学隊によって調査され,ギリシア,ローマの青銅像やガラス製品,インドの象牙浮彫板,中国漢代の漆器など東西のすぐれた美術工芸品が出土。カーピシー国歴代の支配者は,ここを夏都とし,ガンダーラを冬都とした。

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ベグラーム

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