知恵蔵 「ホメオパシー」の解説 ホメオパシー ドイツ人医師ザムエル・ハーネマン(1755~1843)が創始した独特の医療体系。代替医療、民間医療に属し、現代の科学的医療とは異なる。病気の症状および患者・患畜の状態に応じて、その症状と類似した症状を引き起こす物質からできた薬(レメディと呼ばれる)を使って治療を行うことを特徴とする。 レメディは、自然の物質(植物、鉱石、蜂の針等の動物質)をアルコールで抽出したチンキ(マザーチンキと呼ばれる)を、蒸留水で希釈を繰り返して分子が残らないレベルにまで薄め、さらに容器を激しく振り、手に打ち当てるなどして衝撃を与えて作られる。希釈濃度はマザーチンキを10倍に薄めたものを1X、100倍に薄めたものを1cと単位表記し、効力をポテンシーという言葉で表す。ポテンシーは、希釈を繰り返すほど強くなる。一般的に治療に用いられるポテンシー30cのレメディは、マザーチンキを10の300乗倍に希釈したことになり、理論上、レメディの中に元の物質の分子は含まれていないことになる。希釈を繰り返し、振って衝撃を与えることで物質の持つ固有のエネルギーが解き放たれ、波動として水に写し取られ、これが病気の人・動物のエネルギーに働きかけて自然治癒力を高めると説明されているが、現代の科学で作用機序を説明することは不可能である。実際の治療はこのレメディをショ糖や乳糖の粒にしみこませて服用することが多い。 日本ではホメオパシー薬が薬事法上の医薬品ではないことから、ホメオパシーに通じ、治療を行う者(ホメオパス)は必ずしも医療者でなくてもよく、理論を学べばセルフケアに役立てられることが利点とされている。 現代科学の観点からすると、ホメオパシーのレメディの効き目はプラセボ効果以上のものはないとされる。効果がない以上副作用もないが、症状が良くなる直前に一時的に悪化する「好転反応」と呼ばれる事象が起きることがあると言われる。また、誤った使い方によって弊害が出る場合がある。2010年5月に山口地裁に損害賠償請求訴訟が起こされた事件では、ホメオパシー団体に所属する助産師が、乳児に必要不可欠なビタミンKを投与せず、ビタミンKと同様の効き目を持つとするホメオパシーのレメディを投与したため、結果的にビタミンK欠乏性出血で乳児が死亡した。日本でホメオパシー普及にかかわる諸団体は、この事件に関し、本来のホメオパシーの原理に反するレメディと呼べないものが使われたという反証を行っている。ホメオパシーが医療である以上、ホメオパスも医療者(医師・歯科医師・獣医師)のみがその資格を持つべきと主張する団体もある。レメディの中に、ノソードと呼ばれる病原菌およびウィルスを原料にしたものがあり、ワクチン投与の代替品として使われて、物議を醸すこともある。また、プラセボ効果しかないという意見に対しては、「動物や乳児に効果が見られるのでプラセボではない」とする反証もされている。 ホメオパシー理論そのものは、現代医学を根本から否定するものではないが、化学物質とそれを使う現代医療を否定するあまり、ホメオパシーを盲信する人もいる。この点では、健康食品他の代替医療全般に共通する問題という見方もできる。 ホメオパシーは、発祥の地ドイツをはじめ、欧米諸国やインド、中南米などで医療の中に浸透しているが、近年、公的医療保険の適用からは除外される傾向にある。10年7月、イギリス議会はホメオパシーを公的医療保険から排除せよと勧告したが、イギリス王室が伝統的にホメオパシーを採用していることもあってか、イギリス政府は「患者と医師の選択の自由」を理由に勧告に従わなかった。 科学で立証不可能として排除される一方で、根強い人気、信頼があることも事実であり、アメリカの医学誌にがん細胞を細胞死させる効果についての論文が発表されるなど、新しい研究も続けられている。現代の科学が本当に万能かという哲学的な疑問も内包する存在と言えよう。 (椎崎亮子 フリーライター / 2010年) 出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
占い用語集 「ホメオパシー」の解説 ホメオパシー 「同種療法」・「同毒療法」・「同病療法」と訳され、日本では代替医療のひとつとして捉えられている療法。患者に、その症状と似た症状を起こさせる物質を、ごく薄く薄めて与えることにより、症状を軽減したり治したりする療法。 出典 占い学校 アカデメイア・カレッジ占い用語集について 情報