ドイツの哲学者、社会学者。いわゆるフランクフルト学派の指導者。フランクフルト大学などに学び、1925年カントに関する論文で教授資格を取得。1930年にフランクフルト大学の社会哲学の教授になるとともに、「社会研究所」を主宰、1933年から1949年に至るアメリカ亡命中も、同研究所の機関誌『社会研究』Zeitschrift für Sozialforschungの編集を通じて研究活動を組織する。彼の立場は、独自の唯物論に基づく実践的な「批判的理論」であり、それは観照的な「伝統的理論」に対置される。この立場から、カント、ヘーゲル、マルクスを連ねる古典哲学の理念と、社会学、心理学、精神分析などの新しい科学的成果を総合する現代社会理論の共同研究を目ざした。『権威と家族』(1936)、アメリカでフローマンSamuel H. Flowerman(1912―1958)とともに編集した『偏見の研究』Studies in Prejudiceシリーズ(1949~1950)は、その輝かしい成果であり、同時期の社会科学史に画期的な役割を演じた。晩年にはフランクフルト大学総長にも就任、ショーペンハウアーのペシミズムとドイツ古典哲学の教養に基づく近代文明批判は、アドルノらに強い影響を与えた。ほかに『理性の腐蝕(ふしょく)』(1947)、『Kritische Theorie』2Bde.(1968)などがある。
[徳永 恂]
『山口祐弘訳『理性の腐蝕』(1970・せりか書房)』▽『M・ホルクハイマー著、清水多吉編訳『道具的理性批判Ⅱ』(1970・イザラ書房)』▽『マックス・ホルクハイマー著、久野収訳『哲学の社会的機能』(1974・晶文社)』
ドイツの哲学者,社会学者でフランクフルト学派の指導的存在。フランクフルトの社会研究所,その機関誌《社会研究》を拠点に,1930年代以後アメリカへの亡命時代を通じて理論的抵抗を貫く。戦後ドイツに帰って研究所を再建し,フランクフルト大学学長など各種の要職を歴任した。〈西欧的マルクス主義〉の動機を受け継ぐ〈批判的理論〉の定礎づけに努めるとともに,学際的な共同研究《権威と家族》(1936),《偏見の研究シリーズ》(1950)を主宰。アドルノとの共著《啓蒙の弁証法》(1947)のほか,《批判理論Kritische Theorie》2巻(1968),《道具的理性批判》(1967)などがある。
執筆者:徳永 恂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…フランクフルト大学で哲学を,A.ベルクに音楽を学び,一時ウィーンで音楽雑誌の編集にたずさわったが,1931年に《キルケゴールにおける美的なものの構成》(1933)で教授資格を得,フランクフルト大学の講師となる。33年当時M.ホルクハイマーの指導下にあった〈社会研究所〉のメンバーとなるが,ナチスの政権獲得後イギリスを経てアメリカに亡命を余儀なくされる。アメリカ滞在中,ホルクハイマーと共著で,近代的合理性ないし西欧文明への根本的省察とも言うべき《啓蒙の弁証法》(1947)を出版。…
…それは,社会・文化事象の理解に心理学的視点を導入するさまざまな試みを促進し,大衆社会論,大衆文化批判などを生みつつ,社会科学を革新するうえで大きな役割を果たした。 第3は,M.ホルクハイマー,T.アドルノ,H.マルクーゼら,のちにフランクフルト学派とよばれる人々によるフロイト主義の批判的摂取である。彼らは20年代のワイマール・ドイツで,フランクフルトの社会研究所に拠って,マルクス主義に基づく独自な批判的理論を形成したが,精神分析に深い関心を抱いていた。…
…1930年代以降,ドイツのフランクフルトの社会研究所,その機関誌《社会研究Zeitschrift für Sozialforschung》によって活躍した一群の思想家たちの総称。M.ホルクハイマー,T.W.アドルノ,W.ベンヤミン,H.マルクーゼ,のちに袂(たもと)を分かったE.フロム,ノイマンFranz Leopold Neumann(1900‐54)たちと,戦後再建された同研究所から輩出したJ.ハーバーマス,シュミットAlfred Schmidt(1931‐ )らの若い世代が含まれる。彼らはいわゆる〈西欧的マルクス主義〉の影響の下に,正統派の教条主義に反対しつつ,批判的左翼の立場に立って,マルクスをS.フロイトやアメリカ社会学等と結合させ,現代の経験に即した独自の〈批判理論〉を展開した。…
※「ホルクハイマー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新