ホーチミン市(読み)ホーチミンし(英語表記)Thanh Pho Ho Chi Minh

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホーチミン市」の意味・わかりやすい解説

ホーチミン市
ホーチミンし
Thanh Pho Ho Chi Minh

ベトナム最大の都市で,1975年まではサイゴン Saigonと呼ばれていた。同国南部,メコン川デルタ北東に続くドンナイ川デルタにあり,サイゴン川にのぞむ。年間を通して暑く,平均気温は最も涼しい 12月,1月でも 26℃近くなる。年降水量は約 1800mmで,その大部分は5~10月の雨季に降る。かつてはクメール人集落であったが,ベトナム人の南下とともに 17世紀後半以降その勢力下に入り,ベトナム南部の中心都市に発展。 18世紀後半からフランス勢力の拠点となり,19世紀後半~20世紀前半にはフランス領インドシナの商業,軍事の中心地であった。ジュネーブ協定によりベトナムが南北に分断されていた 1954~75年には南ベトナムの首都であったが,この間のベトナム戦争中はアメリカ合衆国軍が駐留し,避難民が流入して,市の人口は急増した。肥沃なメコン川デルタを背後に控え,もともと農産物水産物集散地として商業的色彩の濃い都市であったが,現在社会主義政権のもとで生産都市に脱皮しつつある。行政的にはハノイ,ハイフォンとともに,省に属さない中央直轄市となっている。市内にはロマネスク様式聖堂や仏教寺院,ホーチミン大学 (1917) をはじめとする高等教育機関,博物館,劇場,植物園など,歴史的建築物や文化施設が多い。首都ハノイとは国道1号線,トンニャット鉄道で結ばれるほか空路,サイゴン川経由の海路でも連絡。南シナ海からサイゴン川を約 100kmさかのぼった市の港は同国の重要な商港で,大型船舶が入港できる。北西郊にはタンソンニュット国際空港がある。面積 1295km2。人口 407万 5700 (1991推計) 。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ホーチミン市」の解説

ホー・チ・ミン市(ホー・チ・ミンし)
Thanh pho Ho Chi Minh

ベトナム最大の都市。1975年以前の名称はサイゴン。17世紀後半のベトナム人華人進出以前はクメール人の町でプレイノコールと呼ばれていた。18世紀末に阮福暎(グエン・フック・アイン)がサイゴンに拠点を置くと華人もここに集中して華人区域(チョロン)を形成,政治,経済の一大中心地となった。19世紀前半にはすでに米の密輸が盛んに行われていたが,フランスの侵略,植民地化によりサイゴン港が開港されると,さらに国際商業的に発達。1955年にベトナム共和国(南ベトナム)が成立するとその首都となった。75年の南北統一後,現在の名前に改名,拙速な社会主義化により大きく衰退したが,80年代末からの刷新開放路線により商工業の中心として復活した。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

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