ポアンカレ予想(読み)ポアンカレよそう(英語表記)Poincaré conjecture

  • ポアンカレよそう〔ヨサウ〕

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

1904年にフランスの数学者アンリ・ポアンカレが提唱した位相幾何学(→トポロジー)における予想。「コンパクトで単連結な 3次元多様体は 3次元球面と同相である」という予想で,すでに証明されている。同相とは連続的な変形で移り合うという位相の概念で,厳密には一方から他方への連続な一対一写像で逆写像も連続であるものが存在するということである(→位相同形)。3次元多様体は局所的には 3次元ユークリッド空間と同相になるような図形である。単連結とはその図形上の任意の閉曲線が連続的な変形で 1点に縮むことを意味する。コンパクトとは,どのような点列をとっても,その適当な部分列をとるとある点に収束するようにできるという性質である。2次元の場合は,閉曲面の分類定理に従う。つまり,単連結な閉曲面は球面と同相である。一般に n+1次元ユークリッド空間において原点からの距離が 1であるような点の集合を n次元球面と呼ぶ。ポアンカレ予想は一般の次元では「n次元球面とホモトピー同値であるようなコンパクトn次元多様体は n次元球面と同相である」と定式化される。一般化されたポアンカレ予想は 1960年にアメリカ合衆国の数学者スティーブン・スメールによって 5次元以上の場合に解決された。4次元の場合は 1983年にアメリカの数学者マイケル・H.フリードマンによって解かれた。元来のポアンカレ予想である 3次元の場合は 2002年にロシアの数学者グリゴリー・ペレリマンがリッチフローと呼ばれる微分幾何学の手法を用いて解決した。2000年にアメリカのクレイ数学研究所が数学の七つの未解決問題をミレニアム問題として提出し,それぞれの問題に 100万ドルの懸賞金をかけた。ポアンカレ予想はこれらの問題の一つとしてあげられていた。ペレリマンは懸賞金の受け取りを辞退している。

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知恵蔵の解説

図形の、連続的な変形によって不変な性質を研究する幾何学の分野をトポロジーという。多様体が主な研究対象。多様体上にをかけ、その両端を持っていつでも縄を手繰り寄せられるとき、その多様体は単連結であるという。1904年、フランスの数学者ポアンカレ(H.Poincar(e))は「単連結な3次元閉多様体は連続変形によって3次元球面になる」と予想した。2003年に、ロシアのペレルマン(G.Perelman)が肯定的に解決した模様。06年にフィールズ賞が授与されたが、辞退した。正解が確定すれば、クレイ数学研究所(米国)が00年に提示した懸賞問題(ミレニアム賞)解決の最初の例になる見込み

(桂利行 東京大学大学院教授 / 2007年)

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