ポリクロロビフェニル

化学辞典 第2版 「ポリクロロビフェニル」の解説

ポリクロロビフェニル
ポリクロロビフェニル
polychlorobiphenyl

略称PCB.ポリ塩素ビフェニルともいう.一般には,ビフェニルC12H10の塩素置換体,すなわちC12ClxH10-xの化学式で表される物質の混合物をさす.C12ClxH10-xで表される物質は,塩素数(1~10)ならびに分子内での塩素の位置に対応し,理論的には210種類の物質が存在する.PCBのガスクロマトグラフィーによる分析でも,数十種類の物質が容易に検出される.工業的には,ビフェニルに触媒として鉄粉を加え,塩素ガスを吹き込むと発熱反応を起こし,130~140 ℃ 付近で塩素化が進行する.ついで副生する塩化水素中和,水洗して除き,減圧蒸留すると得られる.PCBの物理的性質は,その種類によって多少異なるが,いずれも外観は無色透明な油状で,軽い芳香臭を有する.また燃焼性はない.PCBは化学的に非常に安定で,酸にもアルカリにも侵されない.水に難溶,有機溶剤,たとえばエタノールアセトン炭化水素などに易溶.自然環境,とくに淡水や海水中に放出されたPCBは,その分解がきわめて遅く,徐々に生物内に蓄積される.これらの生物を経て,人体に吸収されたPCBは,ほとんど排泄されず,とくに脂肪内に蓄積され,極端な場合はいわゆるカネミ油症,すなわち皮疹,眼異常,内臓障害などを引き起こす.トランスコンデンサーなどの絶縁油工場熱媒体塗料感圧紙などに広く使用されていた.商品名はカネクロール(日本),アルクロン(アメリカ),クロルフェン(ドイツ)などである.しかし,現在は毒性のためその製造と使用が中止されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポリクロロビフェニル」の意味・わかりやすい解説

ポリクロロビフェニル

PCB」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android