改訂新版 世界大百科事典 「ポンポナッツィ」の意味・わかりやすい解説
ポンポナッツィ
Pietro Pomponazzi
生没年:1462-1525
ルネサンス・イタリアのアリストテレス学派の代表的哲学者。パドバ大学で哲学,医学を修め,パドバ(1487-1509),ボローニャ(1512-25)両大学で哲学を教えた。主著《霊魂不滅論》(1516)は,人間霊魂が肉体とともに死滅する可能性を説いて,激しい論争を起こした。本書は元来アリストテレスの《霊魂論》の注解という体裁をとるが,所論を原著者自身のあるがままの意図を解明するという文献学的立場から展開して,伝来のアリストテレス解釈に反駁を加え,人間霊魂の不滅性を否定した。これは当時代の関心の的であった霊魂論争に油を注ぐ結果となり,賛否両論の渦を巻き起こし,禁書として弾圧された。ほかに《運命論》(1520執筆)など若干の著述があるが,それらに見られる彼の立場は必ずしもラディカルなものではない。しかし彼によって惹起された霊魂死滅論が伝統的教会教義に与えた打撃は革命的なものであった。
執筆者:清水 純一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報