改訂新版 世界大百科事典 「マクファーソン」の意味・わかりやすい解説
マクファーソン
James Macpherson
生没年:1736-96
イギリス,スコットランドの詩人。インバネスの貧農の子に生まれ,大学を出て教師をしながら処女詩集《ハイランドの人》(1758)を出した。2年後,3世紀の伝説的詩人オシアンの原稿の翻訳といって《古代詩断片》(1760)を世に問い,さらに叙事詩《フィンガル》(1762),《テモラ》(1763)を公表した。これら3部の翻訳の真偽は問題となり,S.ジョンソン博士は〈にせもの〉と断定した。事実は古代ゲールの民話をもとにした彼の創作と思われる。マクファーソンは国民詩人を待ち望むスコットランドの愛国者に祭りあげられたが,古代ゲーリック詩の趣をもつそのユニークな散文詩は神秘的でロマンティックな荘重な響きを伝えている。はるかな過去と栄光の古代文化へのあこがれが脈うつ彼の詩は,うまく時流にのって,イギリスはもとより,ひろく大陸文化に影響を与え,ロマンティシズム文学の先駆けをなしたのは特筆すべきことである。
→オシアン
執筆者:松浦 暢
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報