デジタル大辞泉 「インバネス」の意味・読み・例文・類語
インバネス(inverness)
[補説]地名別項。→インバネス
翻訳|Inverness
イギリス、スコットランド北部、ハイランド地方の都市。北海に臨むマリー湾Moray Firthのネス川河口に位置する。人口4万3100(2002推計)。11世紀にマクベス城が建てられ、長くスコットランド王の居住地であった古い町。「ハイランドの首都」と称される同地方の中心的な都市で、交通の要衝でもある。港湾を有し、北部のデングウォール、ウィック、サーソや、西部のカイル・オブ・ロハルシュなどの諸都市とは鉄道で結ばれる。北東13キロメートルには空港があり、諸都市への便のほか、ヘブリディーズ、オークニー、シェトランドなどの各諸島へ空路が開けている。ニシン漁が盛んなほか、家畜、羊毛の市場が開かれる。印刷、食品、醸造、羊毛、造船などの小規模な工業がある。周辺には氷河侵食による荒れ地が多く、沿岸にはフィヨルドが発達し、ネス川上流11キロメートルにはネス湖があって、夏にはこれらを巡る観光客が多い。ネス川、ネス湖を経て、カレドニア運河が大西洋に通ずる。
[米田 巌]
インバネス・ケープinverness capeまたはインバネス・コートinverness coatのこと。身頃(みごろ)にケープのついた袖(そで)なし外套(がいとう)。ケープは肘(ひじ)を覆ってゆったりしたもの。襟は首にぴったりしていて防寒の役割を果たしている。19世紀のなかばごろ、男子が着ていたパルトー・ケープpaletot capeにこの名がつけられた。もともとスコットランド北部のインバネス地方で着られていたことにちなんだといわれる。日本では明治初年に輸入され、和服の上に着用しやすい形に考案されて、「とんび」「二重まわし」とよばれて流行した。男子の和服用防寒外套として羅紗(らしゃ)、厚地ウールなどで仕立てられ、かなり広く一般に用いられたが、男子の和服姿の減少とともにみられなくなった。
[菅生ふさ代]
19世紀の男子洋服コート。袖の代りにケープが付く。名はスコットランドの都市インバネスにちなむもので,幕末に洋服をとり入れた日本でもこれが着用され,その形から鳶(トンビ)と呼ばれた。福沢諭吉が片山淳之助の名で著した《西洋衣食住》(1867)に,〈合羽 マグフエロン 日本ニテ俗ニトンビト云〉とある。このケープ式袖付は和服の上に着られるので,和装防寒コートに利用された。明治初年から,その着用が見られる。大阪の豪商松本重太郎は1870年(明治3)に,心斎橋通りでトンビ商を開いた。明治中期には二重回しとも言い,丈も変化し,黒地から縞物へ,また襟にラッコの毛皮をつけるのも流行した。その後,インバネスは20世紀に入ってからの西欧では日常服に用いず,燕尾服用コートとなった。日本でも洋装には使わず和装のトンビ,二重回しとして残った。
執筆者:中山 千代
イギリス,スコットランド北部にあるハイランド州(旧,インバネス州)の州都。人口5万6557(1981)。モレー湾に注ぐネス川の河口に位置し,またカレドニア運河の入口にもあたるため,ハイランド地方の商業・交通の中心地となっている。海港を有し,羊毛,車両,ウィスキー醸造などの工業も発達する。古代にはピクト人の主都であり,11世紀以降はマクベス城下の王立都市として繁栄した。クロムウェルが建設した要塞も残るが,現在の城は1835年に建設されたものである。夏にはネス湖などへの観光基地としてにぎわう。
執筆者:長谷川 孝治
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