アメリカ合衆国における自然保護思想の父,文学者,外交官。バーモント州ウッドストックの生れ。ダートマス大学卒業。トルコ公使,初代のイタリア公使などを歴任。1864年に出版された著書《人間と自然》は不朽の名著で,植樹祭Arbor-Dayや国の森林委員会や保全委員会の創設をはじめとして,世界的に自然保護運動に強い影響を与えている。地理学史上におけるマーシュの意義は,自然が人間に及ぼす作用という伝統的環境論をコペルニクス的に転回させて,人間の主体性と責任を中心とする自然秩序の変化,資源の浪費,生活環境の悪化について,初めて実証的かつ体系的な書物を著した点に認められる。1955年,C.O.サウワー,L.マンフォード,M.ベーツの共同座長により,1週間にわたって開催された国際シンポジウム〈地球表面を改変する人間の役割〉は,マーシュにささげられたもので,限られた地球資源の再認識を促す契機となった。
執筆者:西川 治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アメリカの古脊椎(せきつい)動物学者。ニューヨークで生まれる。エール大学を卒業し、ベルリン大学、ブレスラウ大学などに留学したのち、エール大学教授(1866)、ピーボディ博物館地質学・古生物学部長を務めた。アメリカ合衆国西部のジュラ系や白亜系に脊椎動物化石の発掘のための探検隊を組み、競争相手のコープ同様に、化石収集に努力し、収集品の研究にも業績をあげた。とくに恐竜類・有歯鳥類についての研究が著名である。資金はすべて叔父にあたる富豪の慈善家ピーボディGeorge Peabody(1795―1869)による。合衆国地質調査所所員、国立科学アカデミー会長なども務めた。
[小畠郁生]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 最初の経済品種である有核(種子あり)白肉のダンカンは1830年ころ生じた。現在の主要品種マーシュ(無核,白肉)は1860年ころ突然変異系統として発見された。初期の有核白肉品種から無核白肉,有核有色,無核有色の品種が派生している。…
…そうした所説を批判し科学的環境論の基礎をつくったF.ラッツェルにおいても,どちらかといえば自然が人間に及ぼす影響という命題に重点がおかれていた。それに対して,アメリカ合衆国の自然保全運動の父と呼ばれるマーシュG.P.Marshは,1864年に《人間と自然,あるいは人為によって改変された自然の地理》という著書において,すべて人間を主格とする自然変貌論を展開した。ヨーロッパにおいても20世紀初頭ころより,景観改変者ないし形成者として人間の役割に視点をおいた人文地理学の研究がしだいに盛んになった。…
…そうした所説を批判し科学的環境論の基礎をつくったF.ラッツェルにおいても,どちらかといえば自然が人間に及ぼす影響という命題に重点がおかれていた。それに対して,アメリカ合衆国の自然保全運動の父と呼ばれるマーシュG.P.Marshは,1864年に《人間と自然,あるいは人為によって改変された自然の地理》という著書において,すべて人間を主格とする自然変貌論を展開した。ヨーロッパにおいても20世紀初頭ころより,景観改変者ないし形成者として人間の役割に視点をおいた人文地理学の研究がしだいに盛んになった。…
※「マーシュ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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