日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミヤコワスレ」の意味・わかりやすい解説
ミヤコワスレ
みやこわすれ / 都忘
[学] Aster savatieri Makino
Gymnaster savatieri (Makino) Kitam.
キク科(APG分類:キク科)の多年草。本州から九州に自生するミヤマヨメナの園芸品種である。花茎は高さ15~30センチメートルで、葉は長楕円(ちょうだえん)形。4月中旬~6月中旬、濃紫、濃桃、鮮紫、鮮桃、白色などの頭花を数個つける。秋に植え付けたあと年内に十分寒気に当て、1月から温室に入れると、2~3月に開花する。日本独特の園芸種のため、古くから茶花に利用される。近年利用範囲が広くなり、一般の切り花としてもよく栽培されるほか、半日陰の庭植え、あるいは鉢植えにもされる。庭植えは、排水がよく、夏は涼しい半日陰がよい。繁殖は秋の株分けと、5~6月の挿芽による。
[魚躬詔一 2022年4月19日]
文化史
ミヤコワスレの名は順徳(じゅんとく)上皇の故事にちなむとされる。承久(じょうきゅう)の乱(1221)で鎌倉幕府討幕に失敗し、佐渡島(さどがしま)に流された順徳上皇は20年余をその地で過ごした。ある秋の日、庭に咲いていた野菊を見て、いままで都のみやびやかな暮らしを恋しがっていたが、この花はそれを忘れさせると仰せられたので、都忘れの名でよばれるようになったという。この伝承が正確だとすれば、現在のミヤコワスレとは花期が一致しないため、むしろ秋咲きのユウガギク、シラヤマギクやヤマシロギクが該当するとの見方もある。ミヤコワスレの別名とされるノシュンギク(野春菊)の名は、『大和本草(やまとほんぞう)』(1709)に漢名「六月菊」の和名としてあげられ、旧暦3月に開花し、花はアズマギクに似るなどの記述がある。
[湯浅浩史 2022年4月19日]