日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミョウガ」の意味・わかりやすい解説
ミョウガ
みょうが / 茗荷
蘘荷
[学] Zingiber mioga Rosc.
ショウガ科(APG分類:ショウガ科)の多年草。日本では本州から沖縄にかけて分布する。やぶの陰などに生え、裏庭などに栽培もされる。茎はほぼ1メートルになり、2列に葉を互生する。葉身は30センチメートルほどの長楕円(ちょうだえん)形で先が細くとがる。葉鞘(ようしょう)部は茎を抱く。冬には地上部は枯れる。地下部に多肉質の地下茎が横走し、初秋に地下茎の節部から花茎を生じ、その先が地上に現れて花穂をつける。花穂は多数の包葉が左右2列に重なり、全体は長さ5~7センチメートルでやや扁圧(へんあつ)状となる。包葉は紅褐色。包葉の間から淡黄色の一日花を一つずつ開く。花は3弁で、雄しべ1本、雌しべ1本。まれに結実して、白い仮種皮に包まれた黒い球形の種子が実る。花穂を花(はな)ミョウガまたはミョウガの子とよび、食用にする。また若い茎を暗所で軟白徒長させたものをミョウガタケ(茗荷竹)といい、これも食用にする。
ミョウガは繁殖力が強く、耕さなくてもよく生育するが、冬は籾殻(もみがら)などを敷くと寒さに傷まず、翌春の芽出しが早い。ミョウガタケを得るには発芽前に50センチメートルほど板囲いして土や籾殻をかぶせる。また根株を掘り、温室で同様に覆って軟化促成させることもある。品種としては夏に花をつけるやや小形の夏茗荷と、秋に出る大形の秋茗荷がある。
[星川清親 2019年6月18日]
利用
特有の芳香と辛味があり、和風料理のスパイスとして利用する。花ミョウガは料理のつま、吸い口、薬味、酢の物、てんぷらなどのほか、甘酢漬けや塩漬けにしたものをシソで染めて食する。ミョウガタケは汁の実、酢の物などに好まれる。ミョウガの食用は『延喜式(えんぎしき)』や『正倉院文書(しょうそういんもんじょ)』にもみられ、歴史が古い。なお『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』には「蘘荷があるが、滋味であるのを知らない」と記されている。花ミョウガの成分は100グラム中、水分94.2グラム、タンパク質1.2グラム、糖質2.1グラム、灰分0.7グラムで、無機質類やビタミン類も全般に含量が乏しい。
その他根茎からとった粉を漢方では茗石(みょうせき)といい、眼科の薬とする。また茎を陰干しし、裂いて縄につくるとじょうぶで、昔は草鞋(わらじ)や下駄(げた)の緒に用いられた。
[星川清親 2019年6月18日]