ミンバル(その他表記)minbar

デジタル大辞泉 「ミンバル」の意味・読み・例文・類語

ミンバル(〈アラビア〉minbar)

モスク内部にある説教壇ミフラーブの脇に設けられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ミンバル」の意味・わかりやすい解説

ミンバル
minbar

イスラムの礼拝堂モスク,とくに大都市の主要モスクのミフラーブの右側に設置される説教壇で,イマームの説教やコーラン朗唱のために使用される。かつてはここから種々の布告公文書通達が行われたこともあり,初期のイスラム社会においては政治的・宗教的象徴であったといえる。大理石煉瓦が使われることもあるが,多くは木製で透し彫や浮彫の装飾,象牙・真珠母貝の象嵌が施されることもある。形式的には階段状に一連のステップが設けられ,規模の大きいものには,入口に扉を付け頂上に丸屋根を載せたパビリオン風の玉座が設けられる。最上段の玉座は預言者ムハンマドを記念して実際には使用されない。ミンバルの起源は預言者が説教に用いた台上の肘掛椅子様の簡単な玉座にあり,時とともに階段状の高い形態をとるようになった。ミンバルはモスクの重要な構成要素としてウマイヤ朝期にはシリアのほぼ全土に広がったといわれる。旧来の場所で使われてきた最古の例はカイラワーンの大モスクのミンバル(木製。9~10世紀)である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミンバル」の意味・わかりやすい解説

ミンバル
minbar

モスクにおいて通常ミフラーブの向って右に設けられる,階段のついた高壇。会衆礼拝のときここから『コーラン』の1節が唱えられる。ムハンマドが説教のとき上った台が起源とされ,徐々に段数が増し6~9段,もしくはそれ以上にもなった。初期には為政者の演説壇も兼ねたが,アッバース朝時代に純粋に宗教的なものとなり形式化した。彫刻の施された木造の移動可能のものが多いが,大理石,スタッコ (化粧漆喰) ,モザイクで装飾された固定式の石造,煉瓦造のものもある。

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世界大百科事典(旧版)内のミンバルの言及

【イスラム美術】より

…また,視覚的にも単調きわまりない環境に取り囲まれた都市などオアシスの集落では造園に力が注がれ,噴水や縦横に配置された水路を基本とした庭園が随所に設けられた。 宗教的な観点からは,礼拝のために地域住民の大部分を収容できるスペースがモスクにまず要求され,さらに,聖地メッカに面する内壁面に設けられ,礼拝の方向(キブラ)を示すミフラーブ(壁龕)が必須条件となり,そのほかに礼拝を指導するイマームの座席ともいうべき階段状のミンバル(説教壇),礼拝に参集すべくムアッジンが信徒に呼びかけを行う高塔ミナレット(マナーラ),礼拝の前に行う潔斎(ウドゥー)のための泉亭ないし水槽などが重要な条件となった。 イスラム世界の建築に見られる閉鎖性の側面は,特に民家の造りに影響を及ぼした。…

【モスク】より

…すべてのモスクに不可欠な要素は,メッカの方向(キブラ)を示す象徴的な壁龕(へきがん)ミフラーブであり,多数の信徒を収容する広い空間である。必要に応じて任意に設置されるものとしては,イマームが説教を行う説教壇ミンバル,為政者用の仕切席マクスーラ,コーランの朗唱者用の台座クルシー・スーラー,折畳み式書見台ラヒールなどがある。また,モスク外部には信徒に祈禱の時刻を告げるための塔ミナレット(マナーラ),通常は中庭(サフン)に設けられる洗浄(ウドゥー)用の水槽や泉亭などが,その規模,数,様式はそれぞれ異なるが,設置される。…

※「ミンバル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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