ミフラーブ(英語表記)miḥrāb

デジタル大辞泉 「ミフラーブ」の意味・読み・例文・類語

ミフラーブ(〈アラビア〉mihrāb)

モスク内部にある、カーバ神殿の方向にあたる側に作られた壁龕へきがん(壁のくぼみ)。この方向に向かって礼拝を行う。

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改訂新版 世界大百科事典 「ミフラーブ」の意味・わかりやすい解説

ミフラーブ
miḥrāb

イスラムの礼拝堂モスクの四壁のなかで,とくに聖地メッカの方向に面する側の内壁に設けられるアーチ形のニッチ壁龕)。主軸となる中央廊(幅広く一段高い)とキブラ壁との接点などに設置されることが多いが,小型のミフラーブが数基加えられることもある。イスラム教徒はメッカの方角(キブラ)に向かって礼拝を行うが,ミフラーブはキブラの表象といえる。しかし,さらに重要なことは預言者ムハンマドが信徒たちに神の啓示を伝えた地点を記念する象徴性をそなえていることである。したがって,ミフラーブはモスクの中枢としてしっくい大理石タイル,ガラス・モザイクなどで集中的に装飾される。形式的には,古典古代のニッチやビザンティン教会のアプス(後陣)からヒントを得たと考えられるが,すでに8世紀初期にはアーチ形のニッチがミフラーブの形式として確立されていたといわれる。その代表的な例としては,カイラワーンの大モスクのミフラーブ(9世紀。タイル,大理石),コルドバメスキータのミフラーブ(10世紀。しっくい,ガラス・モザイク)があげられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミフラーブ」の意味・わかりやすい解説

ミフラーブ
miḥrāb; mehrāb

モスクにおいて,礼拝室の最奥の壁に設けられた一種のニッチ (壁龕) 。キブラ (メッカの方向) を示すもので,アーチによって縁どられ,大理石,スタッコ (化粧漆喰) ,タイル・モザイクなどによって,美しい装飾が施されるものが多い。 694年メディナのモスクに設けられたのが最初といわれ,イスラム初期に成立したと推定される。起源に関して諸説があるが,キリスト教教会堂の最奥のアプスにそれを求める説が有力。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ミフラーブ」の解説

ミフラーブ
miḥrāb

モスクの礼拝室においてカーバ神殿の方向に面した壁に設けられるアーチ型のくぼみで,礼拝のためのキブラを示す目印。法学派ごとの礼拝の作法相違力関係を反映し,専用のミフラーブが複数併設される場合もあった。

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百科事典マイペディア 「ミフラーブ」の意味・わかりやすい解説

ミフラーブ

モスクの壁面に設けられる龕(がん)。イスラムでは礼拝の対象としての偶像を排斥し,聖地メッカの方角に面した壁に装飾したミフラーブを設けて,これを礼拝の目印とする。

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世界大百科事典(旧版)内のミフラーブの言及

【イスラム美術】より

…また,視覚的にも単調きわまりない環境に取り囲まれた都市などオアシスの集落では造園に力が注がれ,噴水や縦横に配置された水路を基本とした庭園が随所に設けられた。 宗教的な観点からは,礼拝のために地域住民の大部分を収容できるスペースがモスクにまず要求され,さらに,聖地メッカに面する内壁面に設けられ,礼拝の方向(キブラ)を示すミフラーブ(壁龕)が必須条件となり,そのほかに礼拝を指導するイマームの座席ともいうべき階段状のミンバル(説教壇),礼拝に参集すべくムアッジンが信徒に呼びかけを行う高塔ミナレット(マナーラ),礼拝の前に行う潔斎(ウドゥー)のための泉亭ないし水槽などが重要な条件となった。 イスラム世界の建築に見られる閉鎖性の側面は,特に民家の造りに影響を及ぼした。…

【モスク】より

…モスクは必ずしも建造物に限られない。イードの際のように,地域住民全体が礼拝を行うミフラーブ壁の設けられた広場(ムサッラーmuṣallāまたはイードガー)や,1枚の礼拝用じゅうたんも,それが聖なる礼拝の場である以上モスクである。【嶋田 襄平】
[モスク建築]
 イスラムでは礼拝のために祭壇,聖具,聖画,聖像の類が使用されることはない。…

※「ミフラーブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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