改訂新版 世界大百科事典 「ムフティー」の意味・わかりやすい解説
ムフティー
muftī
イスラム法の解釈・適用に関し意見を述べる資格を認められた法学の権威者。シャリーア法廷のカーディー(裁判官)は,重要あるいは困難な問題に判決を下すに当たってムフティーの意見を求め,後者は必ず文書で意見を提出する。これをファトワーといい,カーディーはそれに基づいて判決を下す。カーディーのほかマザーリム(行政)法廷,君主,個人もムフティーにファトワーを求めることができた。ムフティーの制度はアッバース朝時代に自然にできあがり,オスマン帝国にいたって,各州,地区,都市にムフティーを任命したが,イスタンブールのムフティーはシャイフ・アルイスラームとして,全国のカーディーとムフティーの任免権を握ったほか,そのファトワーで支持されなければ,スルタンも国政を遂行できなかった。ムフティーはカーディーと違って,イスラム法学の造詣が深ければ,婦人や奴隷や身体に障害のある者でも,その職につくことができた。
執筆者:嶋田 襄平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報