改訂新版 世界大百科事典 「メノー派」の意味・わかりやすい解説
メノー派 (メノーは)
Mennonites
オランダ再洗礼派の指導者メノー・シモンス(ジーモンス)Menno Simons(1496-1561)の流れをひくキリスト教の一派。クエーカーと並ぶ絶対平和主義の伝統で知られる。メノーはカトリック司祭であったが,ミュンスター再洗礼派王国(1534-35)を契機に幼児洗礼に疑問をもち,再洗礼派に加わる。しかし,ミュンスターのような武力志向に反対し,新約聖書の暗示する徹底した平和主義を唱えて,多くの信奉者を獲得した。オランダでは厳しい迫害に耐え抜いてやがて信教の自由を認められるに至る。他方,ヨーロッパ各地,ことに新大陸に移住したメノー派は,多くその伝統的な教理や生活を固守し,独自の教派を形成して今日に至っている。現在最も有力なのは北アメリカ大陸で,20万人を超えるとされる。著しい特色は幼児洗礼,誓言,公職就任,兵役などの拒否で,そのため第1次大戦に際しアメリカ政府と困難な関係に陥ったが,憲法改正で良心的徴兵忌避の権利が認められることになった。
執筆者:出村 彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報