ヨロイイソギンチャク(英語表記)Anthopleura japonica

改訂新版 世界大百科事典 「ヨロイイソギンチャク」の意味・わかりやすい解説

ヨロイイソギンチャク
Anthopleura japonica

花虫綱ウメボシイソギンチャク科の腔腸動物刺胞動物)。本州四国九州に分布し,干潮線の砂や小石の中,岩の割れ目などにすむ。体は高さ4~7cm,直径4~6cmの円筒状で,表面全体に小さなこぶがあり,上部のいぼ状吸盤には砂粒などをつけている。このため鎧(よろい)の名がある。体色は淡褐色から濃褐色で,個体によって変異がある。触手は濃褐色から赤褐色で総数96本あり,内側から6,6,12,24,48の順に並んでいる。口盤は青褐色か濃褐色。体内にゾーキサンテラ(褐虫藻類)を共生させている。クロガネイソギンチャクと似ているが,体壁のこぶが全体に散らばっていて付着している砂粒の量が少ないことで区別できる。
イソギンチャク
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨロイイソギンチャク」の意味・わかりやすい解説

ヨロイイソギンチャク
よろいいそぎんちゃく / 鎧磯巾着
[学] Anthopleura uchidai

刺胞(しほう)動物門花虫(はなむし)綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目ウメボシイソギンチャク科に属する海産動物。本州、四国、九州に分布する。ウメボシイソギンチャク科のなかで、体壁上端と触手との間に周辺球があり、体壁に吸着疣(いぼ)の列をもつAnthopleura属に属する。体高は4~7センチメートル、体幅は4~6センチメートルで、体壁、触手とも褐色系、周辺球はクリーム色である。触手は5環列の96本。隔膜は4環列の48対で、第1から第3環列は完全隔膜となり生殖腺(せん)をもつ。本州中部の岩礁海岸の潮間帯上・中部ではもっとも普通にみられ、体壁の吸着疣は日本産のこの仲間ではもっとも吸着力に優れ、体壁上半には虫体の体壁が見えないほど多くの小石や貝殻片をつけている。

[内田紘臣]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨロイイソギンチャク」の意味・わかりやすい解説

ヨロイイソギンチャク
Anthopleura uchidai

刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目ウメボシイソギンチャク科。体高 5~8cm。体は褐色の円筒形で,体壁表面にいぼ状吸盤がある。吸盤は特に上部に多く,小礫や貝殻片などを付着させている。体上部から 96本の触手が出ており,色は透明がかった緑,黄褐桃色など個体による変異が多い。体内に褐藻類(→褐藻)が共生する。日本固有種で,本州,四国,九州の潮間帯の岩のくぼみなどに多産する。(→イソギンチャク類刺胞動物花虫類無脊椎動物

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